内容説明
王朝間の戦争を、傭兵を用い、「在来的な敵」を相手どって行なうゲームとすれば、ナポレオン軍に対抗したスペインのパルチザンは、史上初めて相手を、自らの実存を脅かす「現実の敵」と認識した。19世紀までのヨーロッパ公法は、主権国家と「正しい敵」(この「在来的な敵」と「現実の敵」)概念によって秩序づけられていた。20世紀はこの崩壊を目の当たりにする。一方、19世紀初頭以来萌芽状態にあったパルチザンは、レーニンと毛沢東によって革命と戦争の主役に躍り出るとともに、敵概念にも決定的変化をもたらした。爾来、「絶対的な敵」殱滅への道程が用意される。『パルチザン』をキーに20世紀の経験の変容を叙述した、シュミット政治学の白眉。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
23
「革命戦争のみが、レーニンにとって、真の戦争である…絶対的な敵対関係から発生するものだから…それ以外のすべては、在来的なゲーム」「冷戦とは、公然と暴力的な手段を用いないでそれ以外の手段を用いること…弱者と夢想家のみが、そのことについてだまされる」繰り返し読んだ本、そしてこれからも繰り返し読むであろう怖ろしい本の一つ。カール・シュミットは憲法学者でありながら憲法の枠外、法体系の外側、例外状況について探求した稀有の存在。『アギーレ』に描かれるような国家の原風景、その狂気と暴力と秩序の必要性を論じた幻視者の一人2016/10/19
Ex libris 毒餃子
7
政治的なものの概念 読まないとしっくりこないのかもしれない。2023/12/02
スズツキ
4
今後じっくりと読んでいきたいと思っているカール・シュミット……のちょっとメイン路線から外れた本。しかし、この理論は現状世界を把握するうえでもプラスになるであろうものである。2016/01/30
南禅寺の小僧
4
最初にこれを読むべきではなかったと後悔しつつ。本来、「現実の敵」に対して自衛闘争を行っていた土着的なパルチザンが、レーニンにより「絶対的な敵」を設定され、次の次元へ。米国からしたら今のパルチザンは「犯罪者としての敵」か。2011/03/04
ミスター
3
決定的に重要なテキスト。ドゥルーズによると大地の機械が期待されたものを生成変化だったかをすることによって戦争機械になるらしく、それはここで言われている土着的なパルチザンが絶対的な敵、すなわち階級の敵と結びついた状態を指しているのだろう。そしてあとがきに書いてあることでいうと、アメリカとイスラム原理主義の対立は絶対的な敵同士の闘争ではなく、絶対的な敵同士の革命闘争の誘発を防ごうとするアメリカの「取り締まり」に他ならない2018/10/13