内容説明
本書でアレントは、主としてアメリカ独立革命とフランス革命の経験を比較・考察し、自由が姿を現わすことのできる公的空間を保障する政治体の創設として前者を評価する。政党制や代表制ではなく、ある社会の全成員が公的問題の参加者となるような新しい統治形態がその時そこで始められたのである。忘れられた革命の最良の精神を20世紀政治の惨状から救い出す反時代的考察。
目次
序章 戦争と革命
第1章 革命の意味
第2章 社会問題
第3章 幸福の追求
第4章 創設(1)―自由の構成
第5章 創設(2)―時代の新秩序
第6章 革命的伝統とその失われた宝
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chanvesa
42
話が『革命について』とそれるが、もし日本国憲法やその精神を守ろうとする、あるいは変えようとするのであれば、いずれにおいても、「創設」という意志がなければ不可能な気がする。それは命を賭けた評議会の存在に拠る。しかしいずれにせよ、立憲的統治の元での行為であるならば「法によって(その)権力が制限されている(君主政)という意味で制限された統治」(225頁)でなければ、立憲政に基づかない憲法制定になるため、正統性がない。2016/09/04
テツ
26
アメリカの建国とフランス革命との対比。著者はアメリカを成功、フランスを失敗と断じるが、最初はうっすらと違和感のあったその意見に読了後は頷ける部分も多かった。革命とは何を目指しどんな方法で行うのか。そしてそれを成し遂げた後もやらなければならないことは山積みであって、今ある秩序をただ破壊し理想を一時的に叶えたとしてもそれを革命の成功とはきっと呼べないんだろう。自由の創設。自由の維持。維持のための戦い。また時間のあるときに読み返したい。2018/06/19
34
26
革命論だが、議論の方向性としては、フランス革命の影に隠れてこれまでほとんど評価されてこなかった(とアーレントは言う)アメリカ革命の理論的意義をあきらかにしようとしたもの。アメリカ革命の市民的条件とローマの共和政の伝統を参照しながら、公共的自由とはなにかが問われる。フランス革命における、自由と平等の理念を凌駕してしまったネセシティの論理は、それ以前の王政的・封建的伝統からしてすでに規定されていたとか、権力なき権威についての指摘とか、アーレントらしい視野の広い知性が光る。よく引用される本であるのも頷けよう。2017/01/14
しゅん
25
「革命」という言葉から大分遠いところに来てしまった感があるが、この本の射程は相当に深いので安心して読んだ方がいい。フランス革命を批判しアメリカ建国を忘れられた「革命」として評価する。その差異は公共的な統治の意志。フランスが法をなし崩しに無効にする底の抜けた革命であったことがすべての悲劇の始まりだったことを詳細に論証する部分は非常にスリリング。加えてアメリカがあらゆる矛盾を乗り越えていかに革命を成功に導いたのかという問いの立て方も素晴らしい。原理主義とポピュリズムが複雑に絡みあう現代にこそ読まれるべき一冊。2018/02/25
きゃれら
24
その後の革命のお手本になったフランス革命を失敗、革命だったことさえ忘れられているアメリカ革命を成功としているが、アーレントさんの真意は果たしてその通りなのか?言いたいことを最後にもってくる文章構成になってることもそういう気持ちにさせる。相当な皮肉屋のようだしね。少なくとも、フランスやロシアは、貧困に窮した民を引き入れたから革命をなし得たのであり、アメリカは奴隷にそれを押し付けただけじゃないかという思いは残る。政治や権力、暴力の関係を考える上では、非常に重要な書物で必読でした。もっと早く読むべきだった。2022/10/08