出版社内容情報
難聴のTVディレクターが手話の学校にやってきた。そこでみつけた「共に生きる」ことの意味とは--。ETV特集『静かで、にぎやかな世界』の舞台裏。
内容説明
東京都港区には、日本でただ一つの、「日本手話」を第一言語とした教育を行うろう学校がある。その名は「明晴学園」。二〇一七年の春、この学校の子どもたちを主人公にしたドキュメンタリーを撮影するために、一人のTVディレクターがこの学校を訪れた。実は彼女も難聴者だ。聞こえる人と共に仕事をするなかで、様々な葛藤を抱えていた。「「共に生きる」はきれいごと?」「私は社会のお荷物?」。難聴のディレクターが手話で学ぶ子どもたちの姿を通して日本社会の現実と未来を見つめた、一年間の記録。
目次
序章 静かで、にぎやかな新学期
第1章 難聴のTVディレクター
第2章 手話が飛び交う「明晴学園」
第3章 手話を大切にする学校が生まれた背景
第4章 明晴学園の特色ある教育
第5章 ろうであることを誇りに思う子どもたちと、社会
第6章 悩みながら取材をした卒業生
第7章 手話の子どもたちが描く未来
著者等紹介
長嶋愛[ナガシマアイ]
1980年、神奈川県生まれ。NHKディレクター。2003年入局。奈良放送局を歴て、現在は制作局第3制作ユニット所属。両耳に聴覚障害があり、音声を文字にする通訳と共に働く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
25
まぁ、何はともあれ、興味があって、夢中になれる世界を取材対象にすると、こっちにも熱や興奮が伝わってくる。学んだけども、マウジングとかもあるし、手話は難しい。 2021/04/30
bammbi
24
「聞こえるようになる、魔法の薬」の質問、子どもたちそれぞれの答えにはっとしました。「静かで、にぎやかな世界」は、学校を出た後の、日常であったり卒業後に続く生き方を想像し、手話条例が注目される中で、聞こえないことに対する理解や配慮が、少しずつでも広がればと思いました。 多くの人に読んでほしいと思います。2021/03/22
spatz
14
2018年5月26日初回放送「ETV特集「静かで、にぎやかな世界〜手話で生きる子どもたち〜」この番組をいますぐみたくなった。東京にある私立明晴学園。ちょうど聾をテーマにした小説をよんでいて重なるところが多かったため、なおのこと印象にのこる。手話にも種類があることを知ったのは最近だがそのうらにこんな苦労があるとは。著者は自身が難聴であり、NHKに職を得てからの苦悩から書き起こしているところが、単なる聾学校のレポに止まらない奥行き。2021/04/14
KUMAPON
12
ろう者ばかり十数人の飲み会に参加したことがある。ものすごい勢いで繰り出される にぎやか(を通り越してうるさくすらある)なおしゃべりに全然ついていけず、以前アメリカのパーティーで感じた疎外感を思い出した。日本手話が日本語と異なる体系を持つ独立した言語だという知識は徐々に広まりつつあるとは思うが、それを本当に実感として理解している聴者はどれくらいいるのだろう。最近また手話のドラマが話題になっているが、こういう良質なドキュメンタリーももっと注目されてほしいと思う。2022/12/29
ドシル
11
Eテレの手話関係番組はリアルタイム、録画などで全て見ている。 この本に出てくる番組はもちろん、その前にハートネットTVやろうを生きる難聴を生きるでだって観ている。 そして、難聴のディレクターである長嶋さんが頑張ってあたる様子も番組を通じて見ていた。 だけどこの本は、番組だけではわからなかった長嶋さんの手話に対する想いがよく伝わってくる本だった。 長嶋さんの今後の作品が楽しみになった。2021/01/19