内容説明
中国は雄大なロマンの大陸か。巨大で底知れぬ混沌か。多くの国々に取り囲まれている中国は、周辺国に対して、必要以上に強硬になりがちである。日本の歴史は、ある意味でその姿をとらえようとして成功と失敗を繰り返してきたようなものだった。いま、超大国として台頭してきた中国は、自らの立場に沿って周辺国を変えようとしている。いったい現代中国は何者なのか。この「驕った大国」の本質を悠久の中国史に探り、問題のありかと日本の指針を示す。
目次
序章 習近平時代と「中国夢」
第1章 自足と調和の中国文明
第2章 揺らぐ「礼」と「夷狄」の関係
第3章 近代国際関係と中国文明の衝突
第4章 日本的近代という選択
第5章 社会主義という苦痛
第6章 「中華民族」という幻想
第7章 不完全な改革開放と文明衰退論―六四天安門事件への道
第8章 高度成長は中国に夢をもたらしたか
終章 尖閣問題への視点
著者等紹介
平野聡[ヒラノサトシ]
1970年横浜市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。東京大学大学院法学政治学研究科准教授。博士(法学)。専門はアジア政治外交史。博士論文を出版した『清帝国とチベット問題』(名古屋大学出版会)で、2004年にサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
46
昨今中国韓国で盛んな「反日」。本書ではその実態を西洋の衝撃からくる社会システムの衝突を元に解いている。「中華」という曖昧模糊としたものに厳密な国という形を与えるのが、近代中国の出発点。という理解でいいのかな?や、鼓腹撃壌的な上下関係から国民国家への脱皮的な部分は読んでいて非常に刺激的。ただ現代においてそれが成功しているかどうかは極めて疑問なんだけど。個人的には文明の衝突には必ずしも肯首するものではないが、西洋社会とそれを体現した日本に大した中国、その混乱が今なお後を引いているという論は極めて面白かった。2014/08/03
河瀬瑞穂@トマト教司祭枢機卿@MMM団団長
26
中国近現代史概論。非常に解りやすくまとまっています。日中関係がよくわからないけど、少しでも整理して理解したいという人にはお薦め。あまり深入りしすぎない処含め、一般向けと思います。良書。2014/10/11
ピオリーヌ
16
面白い。著者は『大清帝国と中華の混迷 』(興亡の世界史)を著したことで名高い。中国における歴史的転換期として、1895年の日清戦争の敗北を挙げており、「天下」を包む「礼治」は1895年まで連綿と続いたという。ま夷狄の中で華夏の輝きに対し何の憧れも抱かず、内外ともに乱れた状態の荒々しく恐るべき存在もおり、中国文明から見てその最たる存在は日本であるという。2023/06/29
プレイン
11
この手の嫌中、嫌韓本は溢れかえるが中国の長い歴史から中国の行動、思考パターンを考察した良い本。国の中心たる天下とその周辺国との朝貢関係が成立していた中国。そこに西洋的な主権国家の概念そして植民地主義が入ってきたものだから、両者が噛み合うはずがない。朝貢すら行わない日本が中国の一部を植民地にし憎からうに違いない。かつての朝貢国優等生の韓国も中国についていくしかないのだろうか。改めて中国史を振り返るもののなかなか出口が見えてこず日中関係はどうなるのだろう。2015/05/05
筑紫の國造
10
タイトルだけ見るとよくある「嫌中本」のようだが、中身はとても冷静で知的。東洋史を研究する著者が「中華」という言葉の中身から、近代史における中国のナショナリズム、さらにはこれからの中国と日本の関係についてまでわかりやすく論じている。著者は中国の「新帝国主義」とも呼ぶべき外交については厳しく批判しているが、ありがちな批判ではなく、中国史の「本質」について説きながら現代と未来を論じるので、非常に説得力に富んでいる。歴史を生かすとは、このような態度をいうのだろう。もっと読まれるべき本。2020/02/06