内容説明
一九九〇年代に、若者の仕事は大きく変貌した。非正規社員の増加、不安定な雇用、劣悪な賃金…。なぜ若年労働者ばかりが、過酷な就労環境に甘んじなければならないのか。それは、戦後日本において「教育の職業的意義」が軽視され、学校で職業能力を形成する機会が失われてきたことと密接な関係がある。本書では、教育学、社会学、運動論のさまざまな議論を整理しながら、“適応”と“抵抗”の両面を備えた「教育の職業的意義」をさぐっていく。「柔軟な専門性」という原理によって、遮断された教育と社会とにもういちど架橋し、教育という一隅から日本社会の再編に取り組む。
目次
序章 あらかじめの反論
第1章 なぜ今「教育の職業的意義」が求められるのか
第2章 見失われてきた「教育の職業的意義」
第3章 国際的に見た日本の「教育の職業的意義」の特異性
第4章 「教育の職金的意義」にとっての障害
第5章 「教育の職業的意義」の構築に向けて
著者等紹介
本田由紀[ホンダユキ]
1964年徳島市生まれ。社会学者。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学(教育学博士)。現在、東京大学大学院教育学研究科教授。著書に『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
69
なんかまわりくどい本やなーと思った。要は既存の教育機関が一番の「お荷物」じゃないかと感じてしまった。読み書きと算数ができるようになる10才前後の子どもにロバート・キヨサキの「金持ち父さん貧乏父さん」とパソコンを国費で買い与えて、スマホアプリを作って販売させてみれば。天才プログラマーが誕生するかもしれないが、そんなことは二の次で自分で考える力、問題を解決する能力、法律・経済の素養も身につくと思う。もちろんスマホアプリの販売以外にもスモールビジネスのネタは転がっている。まずは「金持ち父さん貧乏父さん」やね。2017/05/08
ゆう。
32
無批判に求められる労働力育成政策には疑問がある。しかし、働くことを意識した教育は必要だろう。ただ社会に適応する教育ではなく抵抗する教育として教育の職業的意義を問う論には考えるところが多かった。2019/12/19
りか
12
流し読みです。もう少しコンパクトにまとめられていると読みやすいですね。同じことが何回も書かれているような気がします。引用されていた児玉重夫さんの『医者にならなくても医療問題を考えること、大工にならなくても建築問題を考えること、官僚にならなくても行政について批評すること』というお言葉が胸に響きました。2010/09/04
takeapple
11
若者を取り巻く厳しい状況は、決して彼らの自己責任で語られるべきものではなく、社会のシステムを大きく変えることでしか改善できない。そのためには他者の痛みを我が事として、自分の持ち場で自分にできる最善のことを頑張って取り組んでいくしかないということかな。2015/08/07
Nobu A
8
学校で職業的教育をする意義を縦(歴史的)軸と横(国際比較的)軸で徹底的に検証。90年代後半から始まった「キャリア教育」の形骸化と及ぼす悪影響等説得力あるデータを揃え、ブラック企業が台頭し、「正しい働き方」を知らない若者に「抵抗」の術を教育機関が教える必要性を説く。時代に即した柔軟な専門性を教育機関で提供する意義。破綻しかけた国内労働市場をどう建て直すか具体的なデザインを提示。構造的に歪んだシステムは小手先では治療不可能。教育者としての憤りと責務を果たそうとする熱意が伝わってくる。混沌とした将来に一筋の光。2018/01/02