内容説明
資本主義は今、格差を拡大しつつ地球を消費し尽くそうとしている。その制御がかなわなければ、私たちが近代以降なんとか確保しようとしてきた「人間的自由」は、息の根を止められかねない。近代哲学、とりわけヘーゲルは「自由の相互承認」という重要概念を示し、この問題を考える上でも欠かせない。こうした観点から、誤解にさらされてきた近代社会の本質を明らかにし、巨大な矛盾を生む現代資本主義をどう修正すべきか、その原理を探る。
目次
第1章 哲学の基本方法
第2章 近代社会の基本理念
第3章 近代国家の本質
第4章 社会批判の根拠
第5章 人間的「自由」の本質
終章 希望の原理はあるか
著者等紹介
竹田青嗣[タケダセイジ]
1947年大阪生まれ。在日韓国人二世。早稲田大学経済学部卒業。現在、早稲田大学国際教養学部教授。哲学・文芸批評(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
53
現代思想の批判対象になりがちな、ヘーゲルについての入門書はないかと探していて、手に取った。近代の権化ともいえるヘーゲルとその批判としてのマルクスや社会思想であるルソーなどから、現代資本主義の成り立ちと未来を語る。途中で断念。自分が求める内容と違っていた。ヘーゲルとマルクスの入門だけが読みたかった。あと個人的に気がついたのは、経済用語というのは実に面白くない、ということだ。現代思想の呪文めいた、曖昧な用語のなんと魅力的なことかと。2017/04/24
ゆきだるま
7
様々な歴史があって今多くの人々自由となりつつあるが、現状の資本主義による格差など、このままま野放しにしてはならない問題も多々。しかしかと言って反国家、反資本主義を唱えるのは違うと。まず国家というのは各自の闘争を防止するために必要なわけで、そして自由、多様性相互承認のためのシステムでなければならない。また、今の資本主義は真に価値のあるもの(人々が本当にいいと思うもの)ではなく、テクニックとか運とかで価値があると思い込まされてるものが利を独占してて、これに対して手を打たねばと。そしてそういったことをすでに→2022/05/11
さっとん
6
近代社会の思想的根幹を哲学的な流れから考察した一冊。現代思想に登場する国家批判、資本主義批判は現状の批判としては正しさを持っているが、次なる社会システムの構想に繋がっていないという点で不毛である。それは、近代社会の根幹を正確に理解していないからである。次にどんな思想が広まるのか、どんな社会になっていくのか、とても楽しみだ。2018/12/13
Shin
6
再々読くらい。「事そのもの」論について確認したくて読み返したのだが、見事な論旨展開に引き込まれて結局通読してしまった。竹田さんは、政治と経済の哲学について語りつつ、常に「人間が善く生きることとは」という問いから離れず、読者の生きる道を明るく照らそうという気持ちが伝わってきて心が洗われる。魅惑的なレトリックも派手な論理の跳躍も皆無だが、それでもこの人は「ほんとうの哲学者」だと思わされる。けして読みやすい本では無いけど、哲学に興味がある人には自信を持って薦められる入門書たりうると思う。(前回も書いたけど)2011/10/08
はまななゆみ
3
人間の欲望と価値の多様性を相互承認するのが自由の本質。ここまではなんとなく理解できた。でも、資本主義はどうすればいいんだろうか。。内容としては示唆もおおく面白かったです。2014/06/14