内容説明
マルクス主義が大きく後退した現在の状況下で、今あらためてマルクスを読みなおす意義はあるのだろうか。『資本論』をはじめとする主要書を再度きちんと読みこむことでとろえられるマルクス像は、哲学においても、経済学においても、あらゆるイデオロギーを批判して、無神論の位置につねにたとうとする姿であった。既存のマルクス像から自由になり、マルクスの新しい可能性を見出すための最良の入門書。
目次
序章 さまざまなマルクス像
第1章 「ギリシア人」マルクス
第2章 分裂なき共同体
第3章 文明史のなかの資本主義
第4章 歴史的時間の概念―ヘーゲルとマルクス
第5章 『資本論』の学問―「新しい学」の創造
著者等紹介
今村仁司[イマムラヒトシ]
1942年岐阜県生まれ。京都大学経済学部大学院博士課程修了。東京経済大学教授。社会哲学・社会思想史の領域でマルクス主義・構造主義をのりこえる新しい思考の枠組みの構築に意欲的に取り組む
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感想・レビュー
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佐島楓
15
教養として、マルクスの思想が知りたくて読んだのだが、フォントが太字になっていてもよくわからず、同じページを眺め続ける破目になってしまったくらい頭に入ってこなかった。古代ギリシャの思想や社会形態に影響されていたというのは驚き。ヘーゲルはそのうち読まねばなあ。2012/05/04
高橋大輝
11
ソ連崩壊後に生まれた私にとって「マルクス主義=歴史的に誤りが証明されている」という印象が強く、最近までその思想を知りもせず批判して過ごしてきた。ただ、近ごろ構造主義や言語学・心理学等に興味を抱くなかで、たびたびマルクスの思想に触れる機会があり、では偏見を捨て一度その思想に触れてみようと本書を手に取った。結論だけ言うと、本書を読んでその偏見は完全に払拭された。マルクスが語った思想の射程の広さに、ただただ驚くばかりであった。ただ本書の内容はなかなか難しかった。他にも何冊か関連書を読み理解を深めていきたい。2018/01/16
ハチアカデミー
6
C+ 「原初的共同体(古代ギリシャ)の精髄を高次の形態で復活させること」を目指していたという今村氏の指摘が意外で面白い。実践的イデオロギー(=身体化された観念、無意識に実践している価値観)や、目に見える神としての貨幣、所有概念の変遷など、学ぶものが多い。また、答えから問いを抽出することを問題とした功績は限りなく大きいのだろう。マルクスに対する偏ったイデオロギーが薄れている今だからこそ、フラットな目で捉えることができる。あまりにも大きな知の巨人が目指したもの、その可能性を知るにはちょうどよい。入門ではないが2012/03/16
塩屋貴之
5
細かい話は忘れちゃった。マルクスは歴史を重視している。ギリシアがあり、共同体が解体されてくる歴史があり、近代市民社会がもたらした自由がある。そこからさらに私利私欲専有の克服が試みられる。時間意識はどこから来るか。所与の自然に対して部分的限界的可誤的な人間が働きかけ変容させることによって。実践の原理が議論に組み込まれているところがやっぱり強みでありまた弱点でもあるんじゃないかな、と知ったように考えた。2011/04/05
Akito Yoshiue
4
興味深く読んだが、これは「入門」ではないですね。2015/06/23