ちくま新書
お金に「正しさ」はあるのか

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  • サイズ 新書判/ページ数 221p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480062000
  • NDC分類 337
  • Cコード C0210

内容説明

貨幣は、ありとあらゆる“もの”の売り買いを可能にする。性愛や人体、イメージですら、その対象となってしまう。しかも貨幣は、私たちの「闇」に潜む欲望をかきたて続ける。だが貨幣は、「神」や「聖なるもの」の権威が失墜した現代社会にあって、「正義」を実現させる媒体でもある。この矛盾した性質をもつ貨幣は、私たちの「欲望」によって、「妖怪」のごとく自己増殖してゆく。こうした中で、私たちは貨幣とどうつき合ったらいいのか?「貨幣」的現実の深層を探り、現代社会の「正義」の臨界点を指し示す。

目次

第1章 神なき時代の「正義」と「貨幣」(「正義」を計算する?;命に「値段」をつける現代社会 ほか)
第2章 貨幣化された世界と「私」(「無」から「価値」を創り出す錬金術;貨幣は「闇」に潜む欲望を解き放つ ほか)
第3章 貨幣から見える“真実”(「不在の貨幣」を軸にした文学作品群;貨幣に縁取られた「小さな現実」 ほか)
第4章 「正義」を創造する貨幣(正義の「メディア」としての貨幣;『海辺のカフカ』における貨幣 ほか)

著者等紹介

仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学教授。文学や政治、法、歴史などの領域で、アクチュアリティの高い言論活動を展開
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

32
タイトルを「お金」としたのは、「貨幣」では零れ落ちるイメージを重要視したからでしょう。「貨幣」とすれば、2章の『ファウスト』読解のような媒介かキリスト教道徳かという議論に回収されてしまいます。本書では、身も蓋も無い生活実感的な感覚を「お金」と称し、「貨幣」と「お金」の間を通ろうとしていることがうかがえます。3章では、金原ひとみの作品を通じて、何でも交換可能な中で最低限の接触だけで済ませようとする現代の交換不可能性と、その「交換不可能性」が交換価値を生む資本主義化の外部の無さが論じられています。続く『ドラキ2019/03/12

Humbaba

5
お金はいくらたくさんあったとしても、実際に使わないかぎり何の意味もない。それ自体は食べることもできないし、何かを動かしたりすることもできない。しかし、やり取りできるものがあるということは、それだけで信用を持った遣り取りをするためのキーが有るということにも繋がる。2016/03/21

Humbaba

5
貨幣によって,我々はほしい物を自由に購入できるようになった.その利点は計り知れない.しかし,それはただ利益のみをもたらしたわけではない.どのようなものでも自由に交換できるからこそ,欲望を制限するのが難しくなったとも言える.2011/04/22

おらひらお

3
2004年初版。いわゆる貨幣論ですが、ベニスの商人やファウストなどを通じてその特徴や性格をあぶりだしています。貨幣には売れないはずというイメージのものにすら商品にしてしまう能力があるそうです。すべてを理解することはできなかったので、再読予定。2013/04/25

keepfine

2
思想や文学に絡めて貨幣の機能を読み解く試みであるが、そこまで面白くはなかった。「プライベートな領域で起きる問題に関しては普遍化可能な正義の基準を設定できない」と認めてしまえば、普遍的な合意に根差した正義の制度を目指すロールズの正義論は挫折する・・・というロールズ批判は腑に落ちた。ロールズに対して覚えていた違和感の正体である。2016/05/23

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