内容説明
人びとの間に広まるシニシズムや無力感、モラルなき政治家や経済人、やたらと軍事力を行使したがる大国―こうした大小さまざまの事態に直面して、いま「公共性」の回復が切実に希求されている。だがそれは、個人を犠牲にして国家に尽くした滅私奉公の時代に逆戻りすることなく、実現可能なものだろうか?本書は、「個人を活かしつつ公共性を開花させる道筋」を根源から問う公共哲学の世界に読者をいざなう試みである。近年とみに注目を集める「知の実践」への入門書決定版。
目次
第1章 公共哲学は何を論じ、何を批判し、何をめざすのか
第2章 古典的公共哲学の知的遺産
第3章 日本の近・現代史を読みなおす
第4章 公共世界の構成原理
第5章 公共哲学の学問的射程
第6章 グローカルは公共哲学へ向けて
著者等紹介
山脇直司[ヤマワキナオシ]
1949年青森県八戸市に生まれる。一橋大学経済学部卒業。上智大学大学院哲学研究科修士課程修了。1982年ミュンヘン大学にて哲学博士号を取得。現在、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授。公共哲学ネットワークでも活動する
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tetuneco
10
公共という言葉自体、すでに哲学的。2011/11/22
ヤギ郎
8
「公共とは何か」、そして”哲学”は公共について何を論じてきたのか。公共哲学にまつわる古典から現代思想までの系譜を思想家・日本現代史・グローバルの3つのキーワードから切り込んでいく。古代ギリシャのポリスで語られる(ポリス的な)公共から、科学技術の発展から社会も成熟したことにより、福祉も公共の役割が加わった。グローバル化した世界の中で人の幸福を実現することが理論的に思考される。公共を考えることは、哲学というひとつの学問分野に収めることはせず、他分野を交えた総合知として考えることが必要になる。2004年発行。2022/12/12
ネムル
7
明晰にして簡潔とは感じるが、教科書的というのかあまり面白味がない。2018/11/20
Sakana
7
久し振りに良い読書ができた。こんな良識に溢れた本が新書として出版されていたなんて…。出会えたことにまず感謝だ。公共哲学か…。アレントやデリダが好きなこともあって、必然的に大切な概念だと思ってはいたが、これほど惹き付けられるとは。連帯したい。いや、その応答責任が私にはある。2015/08/27
かず
7
私は、常々、「社会における公共意識の未成熟状態」に危機感を感じている。これは、普通選挙制による大衆民主主義化による必然である訳だが、このまま放置しては、未来は「北斗の拳」のようになってしまうだろう(極論だが。)その理由は「哲学の不在」にあると考える。本書に言う「学問のタコツボ化」により、各思想を貫くバックボーンが無くなってしまったため、と考える。本書では、歴史上の様々な思想を取り上げ、「公共とは何か」を考察していく。公共とは、自己と他者を平等に尊重する姿勢から生まれる。そのためには「自分とは」(→)2015/01/16