内容説明
「真理」「ヒューマニズム」「セクシュアリティ」といった様々の知の「権力」の鎖を解きはなち、「別の仕方」で考えることの可能性を提起した哲学者、フーコー。われわれの思考を規定する諸思想の枠組みを掘り起こす「考古学」においても、われわれという主体の根拠と条件を問う「系譜学」においても、フーコーが一貫して追求したのは「思考のエチカ」であった。変容しつつ持続するその歩みを明快に描きだす、新鮮な人門書。
目次
序 現在の診断
第1章 人間学の「罠」
第2章 狂気の逆説
第3章 知の考古学の方法
第4章 真理への意志
第5章 生を与える権力
第6章 近代国家と司牧者権力
第7章 実存の美学
第8章 真理のゲーム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
58
重田園江『ミシェル・フーコー』、桜井哲夫『フーコー』に比べて、突出して優れた本です。従来から著者の文章は、強調も著者らしさも無いが卒なくこなすため、一応読む。が、読み辛い、という印象で読んでいました。類書がフーコーのある一面を強調し、自分たちのディスクールに押し込めようとしているのに対して、本書は例によって淡々と紹介されていますが、それがかえってエノンセ(両方ともフーコー用語です)的効果を発揮しているように思いました。読み飛ばすと何も残りませんが、注意深く読むと、かなり重要なことが説明されています。2019/07/21
i-miya
53
2011.04.17 (あとがき) フーコーは変わり続けました。自己を変えていくことを思考の方法としていたかのように。追求していたテーマ、思考のモチーフがともすれば見えにくくなる。 (本文) (序-現在の診断-フーコーの方法) ミシェル・フーコーは常に<現在>の哲学者であった。(1)<現在>の意味を分析する、(2)<現在>の成立の根拠、背景を考察する、(3)この社会で生きることの意味と問題を問い直す。2011/04/18
mm
29
フーコー関連本2冊目。どちらも年代を追って、フーコーの変遷をたどるという流れは同じ。フーコーの思考は、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続で、時間順に見ないとわからないってこと。しかし、著者によって、どこにフォーカスし、どこにアンダーラインを引き、何を大きな声で伝えるのかってことは違うんだ。。中山さんが、フーコーの中に読み取った大きなことは、自分達の生活する現場で、他者との間に生じている権力関係を作り変えていかない限り、自分達の社会を変える方法はない、という事。権力とは単なる抑圧ではなく柔軟な場である。2021/10/20
フム
24
読書会でたびたび話題にのぼるフーコーの『言葉と物』とても歯が立ちそうにないので、ともかく新書を読んでみた。新書では重田園江『ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)』に続いて2冊目のフーコー。常に〈現在〉の哲学者であったフーコーは、この社会で生きることの意味と問題を問い直し続けた。中でも興味を持ったのはやはり『監視と処罰ー監獄の誕生』だった。(これはいつか読みたくて購入したまま積ん読になっている)フーコーは権力を外部からの強制や抑圧としてでなく、内部から働く力と捉えた。2019/10/27
ゆとにー
21
フーコーの思想の変遷を、主著を追いつつクロニクルに解き明かす。それぞれの成立の経緯、対象の問題群への戦略が丁寧に解説され分かりやすかった。自明のうちに語られるあらゆるものを、人々のうちやあいだを貫いて目に見えずとも作用を及ぼすものを、フーコーは言葉で掬い上げ、一定の歴史のうちに帰し、形成過程を内在的に掘り起こし、一つの書物へと編み上げていく。現在と戦う方法論を生み出すこの哲学者の繊細な手つきには、普通を普通のまま語るわけにいかないマイノリティ・スタディに通じるものを感じた。2019/09/29