内容説明
「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景である。その数少ない座を射止めた「紅一点」のヒロイン像とは。「魔法少女は父親にとっての理想の娘である」「(紅一点の)紅の戦士は“職場の花”である」「結婚しないセクシーな大人の女は悪の女王である」など見事なフレ-ズでメディアにあふれる紅一点のヒロインとそれを取り巻く世界を看破する評論。
目次
紅一点の国(アニメの国;魔法少女と紅の戦士;伝記の国 ほか)
紅の勇者(少女戦士への道―『リボンの騎士』『ハニー』『セーラームーン』;組織の力学―『ヤマト』『ガンダム』『エヴァンゲリオン』;救国の少女―『コナン』『ナウシカ』『もののけ姫』 ほか)
紅の偉人(天使の虚偽―フローレンス・ナイチンゲール;科学者の恋―マリー・スクロドフスカ・キュリー;異能の人―ヘレン・ケラー ほか)
著者等紹介
斎藤美奈子[サイトウミナコ]
1956年生まれ。成城大学経済学部卒業。「妊娠小説」(ちくま文庫)で、評論家として華々しくデビュー
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感想・レビュー
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ヨーイチ
42
この著者は初読。雑誌などでコラムを拾い読み程度。予備知識も無し。結論を先に言うと「やってしもうたあ〜」つまりハズレ。発刊が2001、この頃はフェミニズムって言ってのかしら?この方面は疎いので深入りはしない。題名の「紅一点論」とは俎上に上がっている、特撮ヒーロー物、「宇宙戦艦ヤマト以降の子供向けから脱却したアニメーション映画群」テレビ放映されたアニメーション、などの「それぞれの紅一点(二点、三点も含む)論」では無く紅一点それ自体の後進性(フェミニズムから見た)を論じている。続く2017/07/08
明智紫苑
28
女性がマジョリティーの世界観の小説を書くための参考資料として入手、再読する。女性キャラクターの数が少なければ、「女性」そのもののイメージが限られてしまう。たった一人の女性キャラクターに「女性」全般を代表させるのは、あまりにも無理があり過ぎる(言わずと知れた『ドラえもん』のしずかちゃんが典型例だ)。某小説家さん曰く「私が『水滸伝』の作者だったら、梁山泊の好漢たちの三分の一は女性にしたい」。「女性である」というだけの特権性は、今どきの言い回しでは「オタサーの姫」という造語で揶揄されるようになった。2023/07/07
Shimaneko
25
すでに初版から四半世紀近く経過しているので、アニメや特撮ものについてはネタが90年代序盤どまりではあるものの、論じられている問題の質や内容的にはまったく古びていない良著。その後のまどマギや鬼滅や呪術あたりも、続編として分析していただきたい。終盤の児童向け伝記の改ざんっぷりも、いろいろ新鮮だった。ナイチンゲールが実は筋金入りのクインビーで、統計マニアの凄腕実務派だったとかね。姫野カオルコの解説も面白かった。2023/12/26
bluemint
25
「男の子の国」「女の子の国」、魔法少女、紅の戦士、悪の女王、聖なる母という構造を戦後日本のアニメに当てはめ、分析する。初期のアニメ作品群はこのツールで読み解けるが、流石に最近のものは複雑重層化し、男女の役割も単純ではなくなっているので強引な当てはめは無理に思え、このテーマで一冊は苦しい。後半の女性の伝記、ナイチンゲール、キュリー夫人、ヘレン・ケラーの部分は、私の知っている人物伝とは大きく異なっており面白い。伝記で描かれた業績よりはるかに凄い余生が語られている。あまりジェンダー論臭さは感じなかった。2019/02/18
ヤギ郎
23
考察の着眼点はおもしろい。ただ議論は薄っぺらく感じてしまった。本書前半では、アニメ表現における「男の子の国」と「女の子の国」の力学を分析している。筆者が毛嫌いしているのか、アニメ作品の分析がどうも表面的である。また作品周辺の文献も調べていればもっと強い議論ができただろう。(出版1998年にこの議論をできたのはすごい。)後半は、「伝記」に登場する紅一点を、前半で用いた用語(「魔法少女」「悪の女王」など)で語るところが特徴的である。参考文献が少なく、筆者が自身の議論の位置づけをしめしてくれるとうれしい。2019/09/29