内容説明
36歳の夫ジェラール・フィリップを肝臓ガンで亡くした妻の、夫に捧げるレクイエム。自らの孤独と悲哀を胸に、夫の死を深く見つめて綴った文章には、彼女の高貴な感性と強靱な精神があふれている。真実であること、純粋であること、精神的に優雅であることを心がけていた彼女ならではの、香りたかい愛の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
67
36歳で亡くなった名優ジェラール・フィリップとの最後の日々を妻アンヌが綴る随想。病名を告げられず世を去った夫への愛と喪失感が散文詩のような美しい文章で紡がれる。幼い子供達のために理性を保とうとする強靭さと悲哀に押し流されそうな脆さ。幸せだった日々の追憶。人を愛する者がいつかは通る過程を強い高貴な精神で描き出している。「あなたの微笑、あなたのまなざし、あなたの身のこなし、あなたの声、それらは物質だろうか、精神だろうか。どちらでもあって、分かつことができないのだ」1990年に死去したアンヌは何冊かの小説を→2023/11/12
てるちょこ
7
ジェラールの奥様、アンヌさん による語りかけ。星の王子さまの 朗読が何度もよぎる。いないはずの 彼が補填されるみたいに。 離人的になりながらも、 思い出の呪縛と闘った記録です。2018/07/01
駄目男
2
モディリアーニの妻は夫を亡くした後、アパートから飛び降り自殺したが、愛する人の思いを胸にこれからの人生を生き永らえるのは、さぞかし辛いことだったと思う。 私なら堪え切れる自信がない。 愛する人がもう直ぐ死ぬ、死んだ後の自分はどうするのか。 身悶えするような毎日をこの本は伝えている。 幸い遺児が2人居たことが生きる救いになったのか彼女は1990年まで生きた。2015/05/03
kskkz
1
訳者によるまえがき&あとがきが素晴らしい本書の内容に更なる香り付けをしてくれている気がします。ひとりの人間の「精神」がここまで美しく描かれた書物にはこれまで出会ったことがありません。文章に攫われる快感。。ただただ美しい。。2010/06/08
あいら
0
「きっと気に入るだろうと思ったから、きみにと思って買ってきた。」。須賀敦子の夫が、須賀に本書を贈る時に言った言葉だ。著者の7年間の幸福な結婚生活は、深く愛した夫の病死という絶望で終わる。本書を贈った須賀の夫は、6年間須賀と結婚生活をおくった後、病死する。残酷だと思う。 特に筋がある本ではない。最愛の人を亡くした者が、様々な大きさの絶望にぶつかりながらも、ゆっくりと自分の再生を望む話だ。 アンヌフィリップと須賀敦子の絶望が重なり、読後しばらくぼうっとなる。2015/04/07