内容説明
杉本鉞子は、1873年、越後長岡藩の家老の家に生れ、武士の娘として厳格に育てられた。結婚によりアメリカに住むようになり、すべてがめずらしく目新しい暮らしの中で「武士の娘」として身につけたものを失うことなく、また自分にとじこもることもなく、みごとに自立した考えを身につける。今日に通じる女性の生き方を見る上にも、当時の風俗や生活のありさまを知るためにも、高い価値をもつ。
目次
越路の冬
縮れ毛
寒稽古
旧と新
落葉
お正月
父の苦衷
二つの冒険
盂蘭盆
酉の日〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
180
「武士の娘」。NHKの朝ドラで最近、何度聞いたことだろう! こう思って、元祖『武士の娘』を読んでみた。何とアメリカで(もちろん英語で)1925年(大正14年)に発刊された杉本鉞子(えつこ)の自伝だった。アメリカではベストセラーにもなっていたが日本ではそれほど知られず、日本語訳はズッと後年。「武士の娘は眠っている時でさえも、身も心もひきしめていなければならない」と言われて育った鉞子の一生に、感動した。鉞子は、今の新潟県・長岡藩の家老の娘で、明治維新で敗れた側。「内戦に敗れても武士の誇りを失わなかった」。2019/03/17
Willie the Wildcat
76
文字通り「四海同胞」の精神を体現。著者の人柄、異文化への開かれた心が、他者の心と繋がる理由。身に纏う日本文化が土台。この点、少々素養のない私には耳が痛い。(汗)あくまで自然体な点も印象的。加えて、「真の自由」を語る件から、ご主人他界後の再渡米の覚悟にも納得感。一方、子供を翻弄していると苦悩。先日、次男が私に日本帰任予定の質問をした時のことが頭に浮かんだ。子供なりに当然色々考えている。翻弄していると言えば、翻弄しているんだろうなぁ・・・。何が変わる訳ではないかもしれないが、様々な形で話は聞かなきゃ!2016/01/20
AICHAN
70
図書館本。読了した『鉞子』はこの本の解説書。この順番で読んでよかった。内容の理解が助けられたから。アメリカでベストセラーになり、ヨーロッパ各国でも翻訳され出版された。長岡藩の河合継之助を調べていた司馬遼太郎がこの自伝の存在を知り早速読んで感銘を受けたという。自伝そのものもだが、和訳の日本語の素晴らしさを称賛した。そう知って、これも読んだ。なるほど、忘れ去られかけている美しい日本語が残されていた。訳者は大岩美代さんだが、日本に帰国した鉞子とともに和訳したそうだ。それで素晴らしい日本語訳になったのだろう。2019/06/10
おさむ
44
2018年度最初の1冊は、歴女の女優である杏ちゃんがイチオシのこの本。明治に長岡藩の家老の家に生まれた著者が時の流れでアメリカに渡った。夫を亡くして帰国するも再び渡米するまでの顛末を描く。武士の家のしつけやしきたりがこれほどまでにわかる本は初めて。とても興味深く読みました。礼儀作法の大切や慎み深さなど日本の良い所を再発見します。これは久しぶりに読んで記憶に残る良書でした。オススメです。2018/04/02
mizuki
42
著者の杉本越子さんは武士の娘として厳しい躾と教養を身につけ、結婚により渡米しました。当時の日本の暮らしを知るのにとても良い本です。またアメリカ生活の中に現れる日本との違いを上手く表現されていて、日本の良さを存分に味わうことが出来ました♡ 感情を抑えることを美としていた当時の様子には窮屈さを感じましたがそれも美しく、歌を詠む姿や仕草からは、今よりも自然の美しさに敏感であった日本人の心を知ることが出来、感銘を受けました♡ 日本人の良さはこれからも受け継がれるべきですね。美しい心のもち方を学びました♡2015/11/27