ちくま文庫<br> 映画 誘惑のエクリチュール

ちくま文庫
映画 誘惑のエクリチュール

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  • サイズ 文庫判/ページ数 407,/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784480025029
  • NDC分類 778.04
  • Cコード C0174

内容説明

70年代末から80年代初頭にかけて死去したルノアール、ウォルシュらシネアストへの追悼にはじまり、同時代のアメリカ映画とヨーロッパ映画に関する作品論、作家論を中心に編まれた外国映画論集。フィルムの誘惑に敗れ続ける甘美な快楽と映画について言葉を産み出しつづける戦闘的な意志の拮抗が、今なおしなやかに斬新な誘惑をたたえている。

目次

フィルムを追悼する(ルノワール、または横笛の誘惑;ジョン・ウェインという記号;いまひとりのキャメラを持った男 ボリス・カウフマン追悼;運動=物質=死 ラオール・ウォルシュ追悼;ルネ・クレール追悼)
アメリカ映画(浮上の滑走 フランシス・コッポラ『地獄の黙示録』の一挿話を読む;マイケル・チミノの『天国の門』曖昧な弱さの魅力;ロバート・アルトマンまたは大胆な繊細さ『ウエディング』の自然と不自然;映画作家クリント・イーストウッド;七の奇蹟 バッド・ベティカー論)
ヨーロッパ映画(フィルム的磁力の誘惑 フランソワ・トリュフォー論;フェリーニの『カサノバ』または機械の孤独;エルマンノ・オルミの『木靴の樹』;ダニエル・シュミット試論;『奇跡』の奇跡 ドライヤーの場合)
シネアストたちの素顔(四の悲劇 ビートルズと映画;映画と色彩;触覚的体験としての批評;『ゴダール/映画史』を読む;シネアストたちの素顔)
若干の反=理論的な考察(制度としての映画;映画と批評;映画と文学;物語、説話、そしてその言説;説話論的な知と映画的欲望)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

瓜坊

3
読み終わると、映画を無性に見たくなって、しかし、「映画を見る」ってどうすればいいんだとも思うのである。「映画を見た」と自覚することへの傲慢さに対して、様々な映画監督を取り上げた短い章の全てで一々怒られているように感じて。また、難しいのに読みやすい、だからこそより一層、宙吊りになるようである。どうすればいいのと思いながらも、私は映画館に足を運ぶ。 2016/09/30

oz

3
再読。蓮實さんを誰かに薦める時は『反=日本語』や『表層批評宣言』よりもこちらを薦めたい。各章が独立し短くまとまっていて読みやすいからだ。蓮實さんは色彩映画に移ってより映画から夜が失われたことに当惑の感情を示す。明るさの不足という意味の夜があふれ、暗さという意味の夜が無いというのだ。今まで理解できなかったが読み返してふと、これは谷崎の『陰翳礼讃』に理解の鍵があると思ったが『陰翳礼讃』が図書館にない。なんだというのだ。2009/08/23

2兵

2
映画評論家・蓮實重彦による70〜80年代におけるアメリカ・ヨーロッパ圏の映画に関する映画論集。かなり古い本だが、今読んでも十分面白い。個人的には『恐怖のメロディ』におけるイーストウッドを、それまでの西部劇における「誇張された遊戯的な装飾品のいっさいをぬぎすて」て丸裸だと論じている辺りと、トリュフォー映画を三つの運動軸の交錯によって支えられた映画空間であると論じる辺りが面白かった。シネフィル的な古典映画一辺倒かと思いきや、ジョン・カーペンターの「ニューヨーク1997」にまで言及しているのも興味深い。2021/05/18

gorgeanalogue

2
再読。こちとらがあまりにも個々の映画について無知なおかげで、具体的な作家論も十分面白いが、後半の記号論的映画批評原論、というべきいくつかの論考が面白い。それにしても「触覚的体験としての批評」で魅惑的に触れられるルソンヴィル=ファレル・ジュニアの『幽霊以上に幽霊的なチューブ』ってなんだろうか。索引にも「?」と書いてあって、おそらくこれは架空のフェイクなのだと今のところ自らを納得させるしかできないが、蓮實先生のスノッブな読者の周辺で話題になったことはないのだろうか。2019/04/26

misty

2
素晴らしい作品だと思う。これでもかというくらい、映画監督や作品に対する「凡庸で」「しかし決して退屈ではない」評論が収められている。ウォルシュ、ゴダール、ヒッチコック。蓮實重彦の「表層批評」の実践がみてとれる。しかし彼は生意気だ。上から目線で、いちいち癇に障るような書き方をする。しかしそれを超える知的な文章と、意表をつく分析。2018/02/02

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