出版社内容情報
著者がこよなく愛した江戸庶民たちの日常ドラマ。町娘の純情を描いた「袖もぎ様」、デビュー作「通言室乃梅」他8篇の初期作品集。
【解説: 夏目房之介 】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かっぱ
47
江戸が舞台の短編集。杉浦日向子がいとしき江戸のワタシラを描く。これを読んでいると江戸の生活が垣間見える。町人とお侍(武士)との関係性などがそこに住んでいるように伝わってくる。小野篁は井戸から地獄へ通っていたという伝説があるが、日向子さんは東京のどこかにある井戸から江戸へ通ってらしたのではないかと思えるぐらいに江戸人の生活感覚がわかっておられる。秀作ぞろいの作品集ですが、忠臣蔵の討ち入りを描いた「吉良供養」は起こった出来事が丁寧に順序立てられていて、映画や小説を読むよりも実感としてよく分かる素晴らしい作品。2017/01/07
たまきら
38
江戸雀と二つ枕の中間みたいなかんじの絵で、これはこれで素敵です。江戸時代の生活を切り取った短編集の方も素敵ですが、墨田もんとしては吉良供養は外せない話です!2023/11/07
ぶんぶん
25
【再々読】どっぷり日向子ワールドに浸る、まだ慣れていない筆致が初々しい。 「通言室乃梅」のたどたどしい筆運びが、若書きの書きこみ過ぎが愛らしい。 どうも、皆さんは「吉良供養」を推すようだが、私は「もず」の婀娜っぽい別れのシーンに泣ける。 やるせない、どうにもならない、別れがここにある。 男女の仲の年増と若い二人の関係が身に抓まされる。 外で待っている若い娘の表情が次第に晴れて行く過程が見事。 ともあれ、日向子の初期短編集に酔いたい。2021/05/01
ぶんぶん
24
【再再読】「通言室乃梅」著者デビュー作が読みたくて本を開く。良いですね~、まだ慣れてないから無駄な書き込みも多い。でも、花魁との逢瀬が杉浦流にもうなっている、何やかやあって「ぶれいもの、気を付けさっしゃい」の落ちがある、初の漫画という事もあって落ちを付けたのだろうと思うが、余分かも。 同じ、収録作でも「もず」は男女の別れを描いて一幅の絵を思わせるスタイル、無駄な言葉や絵が無い、最初から最後まで決まっている。 これだけで成長が見える、最後の「知っているかもしらねえが、戸口んところの梅が咲いてたぜ」が秀逸。2022/05/17
ぶんぶん
21
【再読】医院に持って行った待合本。 杉浦日向子の初期の初々しさが色好く出ている短編集。 良いですね~「袖もぎ様」乙女の初恋の表情が可愛い、「もず」の男と女の別れ、最後に「玄関の梅が咲いてたぜ」これが、悲しい。 「ヤ・ク・ソ・ク」の幇間と若旦那のやるせない別れ、こんな表情豊かな表現を出来る作家が、もう日向子以外はいないと思う。 つくづく惜しい作家を亡くしたと思う。 杉浦日向子を読む事に毎回思うのだろうな、なんで居ないんだよ。 また、しばらくして江戸情緒に浸りに来よう。2020/04/23