出版社内容情報
親近感をもって精神の貴族を描いた「右大臣実朝」ほか戦時態勢下に成った秀作を収める。「鉄面皮」「赤心」「作家の手帖」「佳日」「散華」「新釈諸国噺」他。
強い憧洒と新近感をもって精神の貴族のすがたを描いた長篇「右大臣実朝」ほか、息苦しい戦時態勢下に成った秀作諸篇を収める。
目次
鉄面皮
赤心
右大臣実朝
作家の手帖
佳日
散華
雪の夜の話
東京だより
新釈諸国噺
竹青
内容説明
強い憧洒と新近感をもって精神の貴族のすがたを描いた長篇「右大臣実朝」ほか、息苦しい戦時態勢下に成った秀作諸篇を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
69
息苦しい戦時下に書かれているだけに、魂を感じるようでした。この巻ではやはり『右大臣実朝』が圧巻と言えるでしょう。明るく書こうとしているかの如く、重苦しさがあるような気がしました。それだけ精神を注いで書いたのだろうと思いました。日本の作家精神が凝縮されているのですね。2020/05/04
k5
65
「右大臣実朝」が読みたくて。改めて読みましたが、ひょっとしたら一番好きな小説かも知れないです。北条政子、鴨長明、陳和卿と、人間の生ぐさい意図に晒されながらも、飄々とうけいれる実朝がカッコ良すぎる。後半の公暁のところはやりすぎ感も否めないですが、成る程この二人の運命が交錯するのだなあ、と思うと感慨もひとしお。実朝が聖徳太子を尊敬している、というエピソードはすっかり忘れてましたが。ちなみに文庫版全集ですが、私、実は太宰はそれほど趣味じゃないので、他はさほど面白いと思わなかったです。2021/07/04
レアル
65
「右大臣実朝」がこの巻での読み応え。この作品の太宰の筆致描写が、読者の好みの好き嫌いを分けているともよく聞くが「吾妻鑑」等を下地に描かれた「太宰の実朝」。渾身の思いで描いた作品という、太宰の思いが伝わってくる作品でもあり私は大好きな作品の一つ。後の作品はいつもながらの筆致の太宰の随筆かの如くの作品が多く、その中でも「作家の手帖」がお気に入り。時代なのか戦争の色も濃くなってきた。そしていろんな「諸国の話」も面白い。2016/02/02
優希
50
息苦しい戦時下に書き上げただけに、魂を感じました。圧巻なのは『新釈諸国噺』と『右大臣実篤』だと思います。剥き出しの感情と暑苦しさに押しつぶされそうになりました。それだけ精神を注いでいたということでしょう。2023/04/30
honyomuhito
42
流石、太宰治。幼くして鎌倉殿になった実朝が最初は歌を愛し政にも閃きを見せるなど決して愚鈍ではなかった様子から、信頼する人々を失い自らの理想とした政をすることもできずに、徐々に狂っていくのをさまを描くのが見事である。そして訪れる終幕の悲劇。多くを語らずパタッと終わりになった大河ドラマとの共通点を感じないでもない。本当の悲劇は人からそれを語る言葉を奪う。時代が違えば。もっと違った場所で出会える人々なら。そんな言葉は何の意味もない。ただその余韻を味わうことしか出来はしないのだ。2023/01/04