出版社内容情報
「アメリカの影」の下、独自の外交ができずにいる日本。非現実的な外交論の数々を指摘し、戦略的思考を回復するための手立てを示す。
東谷 暁[ヒガシタニ サトシ]
内容説明
地政学がブームとなっている。八〇年代には戦略論がもてはやされていた。にもかかわらず、日本人に戦略的思考は身につかず、政府の外交力も向上していない。一体なぜなのか。この問いに応えるべく、ベストセラーとなった戦略論を俎上に載せ、その誤謬を明らかにしてゆく。その上で、アメリカ、中国、日本など主要国の戦略を概観し、戦略とは何かを指し示す。日本を取り巻く現実を踏まえた上で、戦略論の根本を論じた本書は、これからの日本を考える上で必読の書である。
目次
第1章 閉じられた思考の円環
第2章 経済と技術は戦略を超えるのか
第3章 敗戦は「絶対悪」なのか
第4章 地政学から戦略論へ
第5章 政治が戦略を決める
第6章 グランド・ストラテジーと歴史
第7章 アメリカの戦後と核戦略
第8章 中位国の核戦略と日本
第9章 新時代を拓く「RMA」の虚実
第10章 日本にとっての戦略思想
著者等紹介
東谷暁[ヒガシタニサトシ]
1953年、山形県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、雑誌編集者に。ビジネス誌や論壇誌『発言者』の編集長を歴任し、97年よりフリーのジャーナリストとなる。鋭い洞察に裏づけられた論文やリポートを数多く発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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CTC
8
7月の筑摩選書新刊。著者は『発言者』元編集長。“戦略論”や“地政学”に関連する書籍が増えている。売れているからだろう。本書は80年代の“戦略論”ブームに遡って当時のベストセラーを考察し、併せて本来的な戦略論・地政学を視る事で、「戦略思想がまったく活かされていない」現状に棹差さんとする快著。特に語ることすら半ばタブーとなっている「日本の核戦略」については、一貫して核武装を目指した佐藤栄作ら先人の軌跡から、最新の核紛争理論家の「核兵器を持てば抑止が働くとは思わない」論まで、刮目の内容。著者歴史観は?だけれど。2016/08/17
禿童子
6
なつかしい80年代の戦略論ブームから入る点は私のようなオールドファンには読みやすい。『中位国の核戦力と日本』は、日本における核武装論の簡潔な振り返りになって良かった。東谷さんの立論は、岡崎久彦と永井陽之助など影響力のある日本の戦略論を、ネオリアリズムの国際政治学者ケネス・ウォルツとウィリアムソン・マーレー、コリン・グレイの「グランド・ストラテジー」に立脚して批判的考察を加え、戦後70年の宿命的な戦略的思考の欺瞞に満ちた無限ループからの脱却を訴えている。井上達夫の九条削除論への共感は作家・橘玲と同じ見方。2016/08/16
ドクターK(仮)
3
最近は地政学に関する書物が多く刊行され、ひそかな(?)ブームにもなっているようだが、著者は、地政学の考え方は自然史的な宿命論に傾きやすいとして警戒する。敗戦以来、日本ではいわゆる「戦略的思考」が盛り上がりを見せる時期もあったが、そこには、主体的に自国の運命を切り開いていくというグランドストラテジーが欠けていたという。その傾向はとりわけ軍事方面に顕著であり、核戦略に関する議論への強烈な拒絶反応もその一例だろう。こうした中、我が国で語られることの少なかった真っ当な戦略論を提示している本書の意義は大きい。2017/09/30
yo
3
近年の地政学・戦略論ブームを受け、80年代にもあったブームから、日本におけるそれぞれの議論が如何に屈折しているかを説き、その後大国、中位国の戦略について、核とRMAの議論を含めて検討する。今まで地政学に感じていたもやもやをきちんと言語化していただいたような心持がする。好みの問題はさておいて、今戦略論を語るなら一旦本書に目を通すことは必須である。しかし、個人的には、ヴィピン・ナランの中位国の核戦略理論のあたりはがすごく面白かった。核保有を、どのようなスタンスで保持するかによって類型化したのは新しい。2016/07/20
orihuzakawagon
0
戦略論・地政学ブームをさかのぼってその問題点を捉えなおしている本。戦略論・地政学でどのような事が語られていたかは聞き覚えがあるが、具体的に論の中身までは把握していたわけではないので、出てきた人名や単語をググルさんに確認しながら読み進めたために時間がかかりました。2016/11/22