出版社内容情報
ロシアの極東開発の重点を担ったシベリア鉄道。近代史に翻弄されたこの鉄路を旅した日本人の記述から、西欧へのツーリズムと大国ロシアのイメージの変遷を追う。
内容説明
列強による世界分割のさなか、ロシアの極東開発の重点を担ったシベリア鉄道。20世紀の歴史に翻弄され続けたこの鉄道を旅した近代の日本人の目は、車窓に何を見たのか。ヨーロッパに至る憧れの旅路、軍隊や流刑の民を極東に送る脅威の鉄道、夢の共産主義国家、危険な脱出劇の舞台…当時のガイドブックや新聞記事、ジャーナリストや政治家、作家や芸術家らの記述をたどり、シベリア鉄道という表象装置のイメージ変遷を追う。
目次
序章 旅の始めに―近代日本とシベリア鉄道
第1章 一九世紀後半=世界分割の時代の大鉄道計画―1874‐1902
第2章 日露戦争とシベリア鉄道全線開通―1903‐1909
第3章 第一次世界大戦とシベリア出兵―1910‐1924
第4章 ソ連との国交回復と「黄金の二〇年代」―1925‐1931
第5章 「満州国」建国宣言と第二次世界大戦―1932‐1945
終章 旅の終りに―二〇一二年ユーラシア大陸横断記
著者等紹介
和田博文[ワダヒロフミ]
1954年横浜市生まれ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程中退。ロンドン大学SOAS客員研究員などを経て、東洋大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハチアカデミー
9
紀行文から読み解く、日本人とシベリア鉄道物語。戦前から戦間期までの間、アジアとヨーロッパを結ぶ憧れの乗り物としてシベリア鉄道は表象され続けてきた。様々なテキストを用いて、それらの言説の背後にある日本人の「共同幻想」を浮かび上がらせる。とはいえ、政治家や満鉄関係者などの言葉なども参照にしつつ、「アジア主義批判」のようなものを描くのではなく、異文化交流の中の驚きというような生活観を表立たせている点が評価できる(そこを弱さと見る向きもあるかも知れないが)。一次資料の転載による図版も豊富な点も良し。2013/07/10
メルセ・ひすい
3
ロシアの極東開発の重点を担ったシベリア鉄道。この鉄道を旅した近代の日本人の目は、車窓に何を見たのか。ヨーロッパに至る憧れの旅路、軍隊や流刑の民を極東に送る脅威の鉄道、夢の共産主義国家、危険な脱出劇の舞台…当時のガイドブックや新聞記事などを辿り、シベリア鉄道という表象装置のイメージ変遷を追う。客より乗務員優遇のバス、シャワールームは広く客用はろくな水も出ないのにここでは熱いお湯がいくらでも出る。石鹸をつけたタオルで体を洗い、熱いお湯を浴びると身体感覚はすっかりリフレッシュ!でも150ルーブルをゲットされた2013/04/16
takao
2
ふむ2019/10/25
志村真幸
1
本書は、シベリア鉄道を使ってヨーロッパへ向かった(ないしは帰国した)日本人の記録や旅行記を紹介したもの。19世紀末の開通まもなくから、第二次大戦までの期間が扱われている。 これまで日本人の欧州体験は、ヨーロッパ滞在を中心に研究されてきたが、その「往路・復路」に注目する研究として位置づけられる。 杉村楚人冠、与謝野晶子、荒畑寒村、林芙美子など著名な人物から、無名の人物まで無数の記録がとりあげられており、圧巻だ。また、当時の政治的状況とも呼応して論じられており、時代性がよくわかる。2019/10/07
コホン
0
勝手に紀行文を文学史的に語ってくれるのだろうと期待していたので、そういう意味で期待外れ。 2015/06/30