出版社内容情報
不況にあえぐ昭和12年、突如全国で撒かれた号外新聞。そこには暴動・テロなどの見出しがあった。昭和最大規模のアナキスト弾圧事件の真相と人々の素顔に迫る。
内容説明
日中戦争全面化を目前にした昭和12年、とつじょ全国で号外が撒かれた。そこには「暴動」「黒色テロ」「大陰謀」などの文字が躍っていた。農村青年社事件の報道解禁である。心中・身売りなど、疲弊した農村の現状を救うため、若者たちがめざした理想、そして挫折。恐るべき思想検事によるデッチあげ。昭和史上最大といわれるアナキスト弾圧事件の真実に迫る。
目次
プロローグ 農村青年社事件とは?
第1章 昭和初期のアナキストたち
第2章 農村青年社がめざしたもの
第3章 資金獲得という挫折
第4章 序幕となった無政府共産党事件
第5章 デッチあげの構図
第6章 法廷での人間模様
第7章 政治裁判の実態
エピローグ 戦時下・彼らはどう生きたか
著者等紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
評論家。ノンフィクション作家。1939年、札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業。出版社勤務を経て著述活動に入る。日本近代史(とくに昭和史)の実証的研究、医学・医療の分野を検証する作品を発表している。第52回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さえきかずひこ
4
昭和初期に農村救済に立ち上がった都市民による農村青年社。その短い活動と、戦時体制下での強引な裁判をつまびらかにする。篤実な筆が光る良書。2012/05/18
のうみそしる
2
作者の情熱が伝わってくる文章だった。当事者とのインタビューがあったのでより当時を知ることができる。作者があんまり感情移入せずに、批判するとこは批判してるのが良い。連載物らしく同じ前置きが多少面倒くさいけどいい本。2013/03/15
ポン・ザ・フラグメント
2
戦前の検察の弾圧が、戦後にアナキストとしての面目を保つのに役立ったというコメディ。でっちあげられた陰謀によって、アリのように小さかった運動が象のように巨大なものに変わります。それは気づかぬうちに被害者たちの認識をも蝕んで、幻にすぎなかったものが現実の記憶へと変質します。そのとき本当にあったことは何なのか――「それ」を記録することに意味があると著者は考えているのでしょう。では、この生身の私自身にとって「それ」の意味とは何か? 「それ」は私と(読者であるということの他に)どんな関わりを持っているのでしょうか?2012/09/03
kozawa
2
1970年代中盤に一度取材していたが表に出すことを躊躇った内容をゼロ年代終盤になって改めて表に出した物だと。こうして出ることは価値があるのではと思われるが、当時出ていればという惜しさがないではない。関係者は既にほぼ存命していない…。興味深く読んだ。2012/02/27
takao
1
なぜ、アナキストに?2017/05/26