内容説明
日本語の書き言葉には、緊張感がある。島国の感性を記すために大陸由来の漢字を受け入れ、かな文字を生み出し、独自の書き言葉をつくってきた。日本語を一行でも書けば、誰しも日本語成立の歴史を否応なく体現する。英語を母語としながら、周辺言語にすぎない日本語で創作する作家のまなざしに寄り添い、日本語の魅力をさぐる。自伝的日本語論。
目次
第1章 はじめての日本語
第2章 「万葉集」の時代
第3章 日本語とアイデンティティ
第4章 幻の大陸
第5章 9・11を語る日本語
第6章 言葉の歴史を意識して
著者等紹介
リービ英雄[リービヒデオ]
西洋出身者として初めての日本文学作家。1950年カリフォルニア州生まれ。プリンストン大学、スタンフォード大学の日本文学教授を経て、法政大学教授。万葉集の英訳により全米図書賞。著書に『星条旗の聞こえない部屋』(講談社、野間文芸新人賞)、『千々にくだけて』(講談社、大佛次郎賞)、『仮の水』(講談社、伊藤整文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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チェ・ブンブン
19
新しいゼミの教授が書いたエッセイ。新宿とアメリカ行き来する、アクティブ過ぎる学生時代にビックリ。中上健次の長い文を翻訳するテクニックの凄さに感動。 どうやら、このゼミ、俺一人フラグなので緊張が高まりますw2015/03/31
三柴ゆよし
14
「我的日本語」。サブタイトルは「The World in Japanese」。「私の日本語」ではなく、あくまで「我的日本語」。中国語への目くばせを含んでいるのがまずおもしろい。リービ英雄はアメリカから日本へ「越境」した書き手である。読み手の意識にはまずそれがあるが、実のところリービは、中国というもうひとつのバックグラウンドを担った作家である。アメリカ生まれの少年が育った台湾の日本家屋には、大陸からの政治的亡命者が話す北京語が渦巻いていた。「母国語を母国語の外から眺める」というリービの考えは、(コメントへ)2014/09/11
サアベドラ
8
英語話者でありながら日本語で作品を発表しているアメリカ人小説家のエッセイ。自身の作品と日本語についてはもちろん、著者が英訳をしたことのある万葉集や、日本と並んでよく滞在し小説の題材にしたこともある中国についても書かれている。不思議な文体。2013/11/15
ゆとにー
6
最近読めた本がないなと思いつつ本棚を見回していたら一二年前に読んだきりであったのを突如思い出した。こんな一冊を登録していないことを思い出すなどよっぽど読書メーターの読書グラフに毒されているんだろう。 内容は忘れた。多和田葉子や李良枝を知ったのがこの本だったと思う。2018/10/12
Haruka Fukuhara
4
論として読まずに外国人が思い付きを披露しているんだと大らかに見ればいいのかな。ツッコミを入れたくなる細々とした違和感は全編を通じて溢れているけれど、面白い。アメリカ生まれの日本語ユーザーから見た日本語論みたいなessay。2017/03/05