内容説明
脳科学が哲学と融合した。心を生み出す身体と脳の関係。
目次
第1章 感情の脳科学とスピノザ
第2章 欲求と情動について
第3章 感情のメカニズムと意義
第4章 感情の存在理由
第5章 心を形成するもの
第6章 スピノザ思想の源
第7章 自己保存としての感情
著者等紹介
ダマシオ,アントニオ・R.[ダマシオ,アントニオR.][Damasio,Antonio R.]
ポルトガル生まれ。1969年リスボン大学で医学博士、1974年に理学博士の学位を得た後、渡米。ハーバード大学で認知神経科学の研究を行い、その後アイオワ大学の神経学部長と、ソーク研究所の非常勤教授。2005年より南カリフォルニア大学(USC)脳と創造性の研究所教授。アメリカ芸術科学アカデミーおよびアメリカ科学アカデミー医学協会会員。神経学者であり、神経科医。特に、現代神経科学では国際舞台で活躍する第一人者である
田中三彦[タナカミツヒコ]
1943年栃木県生まれ。翻訳家であり、科学評論家でもある。東京工業大学生産機械工学科を卒業後、企業のエンジニアを経てサイエンスライターになる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
22
やっと読むことができた。私自身がバリバリの文系ということもあって、生物学/脳科学の分野にはおっかなびっくりで読んだのだけれどバールーフ・デ・スピノザの哲学や来歴を平たく整理し(意地悪く言えば、著者なりに歪められたスピノザ像ではあろうかと思うが)、彼の先見の明を紹介し現代の脳科学の成果/実績と結びつける。知的読み物(と書くとクサくなるが)としてスリリングで読みやすいし、スピノザを現代に蘇らせようとする野心が頼もしい。ダイナミックに過去を振り返ることで未来をも見据えた、概観するレンジの広い書物ではないかと思う2021/12/02
roughfractus02
7
心は身体の観念である。スピノザは生命維持機能としてのコナトゥス(生きる努力)を貫くものとして有機体を捉え、身体のより優れた健全性への努力が喜びになるとした。著者はこの考えを脳神経科学から探求する際、興奮等による身体の変化としての情動とそこから起こる快不快の感情を区別し、情動が先行し感情が後から生じたという進化論的説明に根拠を与える。一回的状況に個々に反応する情動の細部を省き、快不快の反応を残せば、時間的に効率的な反応が可能だからだ。ソマティック・マーカー仮説は自然科学で扱いづらい感情領域に踏み込んでいく。2017/09/29
ばにき
3
一読したが、大まかには理解できた。革新的な発展をする人は一見異なるものを結びつける能力が高いんやろなあと思った。2020/03/02
やまべ
3
面白かった。脳科学によって古来の哲学的難題が一歩一歩解明に近づいていくのはスリリングでさえある。けれど「あと一歩」が乗り越えられていない感がある。「心」の成立にとって何が必要条件なのかということは分かっても、「だから『心』が成立する」という理由は分からない。前から思っているのだけど、時計を分解してどれだけ正確にその仕組みを理解しても、今何時かは分からないし、その時刻が精確なのかどうかは分からない。2011/01/30
Yoshi
2
スピノザ哲学が脳科学においてそれの正しさを証明しているのではという事を書いてある本。 正しさというより、機械的なニューロンの発火とその条件の大きなフレームワークがデカルトのいうような割り切れる「機能」とは違い「環境」の様々な要因において複雑に発火しそれが感情へ、それから特殊な情動として現れるというような事を書いていた。 スピノザの副読本として、彼の人生についても書いてあり、様々な反論も書いてあるので興味深く読めた。 神の証明が神への反逆とみなされる時代の学問、哲学、知性についても考えてしまう内容だった。2021/03/24