内容説明
中米や南米の人々を昔から苦しめてきた風土病「シャーガス病」は昆虫カメムシの類縁種サシガメを媒介する感染症だ。患者の多くは山間の貧しい農村に発生する。グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルなどで日本の若者たちが各国の政府や農村の住民らと協力し感染を絶つためにサシガメの駆除に挑んだ奮闘の物語。
目次
プロローグ 一世紀前に発見されたシャーガス病
第1章 シャーガス病は「貧困の病」
第2章 プロジェクト前史:媒介虫の棲みかをつきとめよ
第3章 サシガメを退治せよ:発展期2000~2007年
第4章 低下した感染リスクを維持する仕組みづくり:自立期2008~2011年
第5章 サシガメ対策の成果
第6章 人がつながり、人が育つ
第7章 感染中断の国際認定と今後の展望
エピローグ プロジェクトで育った人たちのそれから
著者等紹介
橋本謙[ハシモトケン]
独立コンサルタント。1974年三重県生まれ。英国ロンドン大学心理学部卒業、ブリストル大学大学院健康心理学修士。2000年に青年海外協力隊員としてグアテマラに赴任し、以後、汎米州保健機関(PAHO)グアテマラ事務所技術顧問、JICAホンジュラス・エルサルバドル技術協力プロジェクト専門家など、中米シャーガス病対策の専門家を歴任。2006年神戸大学大学院国際予防医学博士。2011年豪ボンド大学大学院経営学修士。2012年JICA中米シャーガス病対策広域アドバイザー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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橘
6
標的昆虫にとっては災難だが、プロジェクト遂行の一例となる。撤退後の作戦継続を考慮するなら「現地の人を巻き込む」「子どものうちから教育する」ポイントは外せない。国際化が進む中、この病気は単なる風土病ではない。渡航後、感染に気付かない隣人がいる可能性はあるのだ。2016/03/17
Sanchai
2
兼ねてから発刊を待ちわびていた本。店頭販売開始と同時に読んだ。寄生虫を媒介するカメムシの生態を調べて、対策を打つ。カメムシを完全に駆逐することはできないので、ある程度コントロールできるようになったら、次は住民主体の監視体制を作る。当たり前のアプローチだが、それを途上国の貧困地域で行なうのだからいろいろな苦労がある。そこで奮闘した青年海外協力隊員のエピソードが沢山出てくる。そうした苦労を通じて成長していく隊員達の姿が想像しやすい。地球選書の中では最高傑作の1つなんじゃないかな。2013/02/08