内容説明
タイトルこそ「人はなぜ傑作に夢中になるの」になりましたが、序文にもあるように、本書の目的はかならずしもこの問いに答えをだすことではなく、「傑作」について心の赴くまま、想いをめぐらすことにあるようです。長い年月、多くの人びとを魅了してきただけあって、傑作とされるものは作品そのものをくわしく見れば見るほど、また制作までの経緯や時代背景、美術史との関連を知れば知るほど面白みが増してきます。古典的な名作の説明というと技法や主題のもつ象徴的な意味合いの解決に傾くことの多かった類書のなかでは、著者の視野の広さが新鮮に感じられるのではないでしょうか。
目次
過去の曲解―アルタミラの洞窟絵画
生命の芳香―ネフェルトイティ
破片―ミロのヴィーナス
遠くて近きは…―レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナリザ」
とらえどころのない美―ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」
傑作は作品にあらず、作者なり―ミケランジェロの芸術
性、暴力、信仰―カラヴァッジョ「バッカス」
魔法の絵―ベラスケス「ラス・メニーナス」
身体にシンボルが宿るとき―ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
嫌いな絵を好きになる訓練―マネ「オランピア」〔ほか〕