内容説明
イギリスの庭園思想をリードしたのは、「エデンの園」「アルカディア」という相異なる「夢の楽園」に対する憧れであり、「癒しの庭園」を創ろうと試みる中で、2つの庭園観は相克と融合を繰返した。やがて、近代化過程で「神の創った自然」から「人が管理する自然」へと自然観が変り、世界各地の植物がもたらされ、東洋庭園の影響も受け、庭園様式は大きく変貌を遂げた。本書は、英文学、本草誌、ガーデニングの本などを素材に、イギリス庭園史を追い、併せて、日本人の自然観、日本の庭園史との比較を随所で試みる。図版多数。
目次
第1章 聖書と修道院の庭園
第2章 ギリシア・ローマ文学の庭園思想
第3章 中世の「愛の庭園」とルネッサンスの「魔法の庭園」
第4章 チューダー朝の庭園
第5章 宗教改革とイギリス庭園―十七世紀の庭園その一
第6章 ミルトンが描いた庭園―十七世紀の庭園その二
第7章 十八世紀の庭園思想―イギリス風景式庭園の誕生
第8章 日本の庭園とイギリスの庭園
終章 庭園によって現代の日本を再生する
著者等紹介
中山理[ナカヤマオサム]
1952年三重県生まれ。1976年麗沢大学外国語学部イギリス語学科卒業。1981年上智大学大学院文学科英米文学専攻博士後期課程修了。2002年博士(文学)取得。現在、麗沢大学教授、英文学専攻
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感想・レビュー
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miki
12
卒論の参考資料として。図版が多く内容も凝縮されていてわかりやすい。日本と英国の庭園の違いから文化の違いを知るというのは興味深かった。中山さんの日本列島庭園化論はぜひとも進行してほしい。2013/12/24
viola
5
ブリタニアから中世やルネッサンス、18世紀までのイギリスの庭。類書よりも読みやすく、思っていたよりも面白い!庭の概念が特にイギリスは独特ですし、文学に取り上げられることが多いから一度勉強してみるのも良さそうです。日本では、本来畑にあるべき果樹を庭に持ってくることを卑しい行為だと見なす地域もあるそうですね。いちじく、ざくろ、ビワなどは不気味な果樹で身がなると家族に病をもたらすと思われていた・・・・・とか。美味しいのに!2012/01/17
chang_ume
4
イギリス庭園(風景式庭園)は、いかなる思想的背景のもとで成立したのか。ミルトン『失楽園』を主テキストに、楽園(古代のアルカディア、聖書のエデンの園)の回復をキーワードとして、庭園史の全体理解を目指した一冊。ですが、項目羅列気味でやや散らかった内容かも。たとえばピクチャレスクがイギリス庭園に与えた影響は、結局のところ本書ではよく分からず。ただ、キリスト教世界にとっての「楽園」とは何か。この部分については理解が大いに促されました。失われた過去の理想回復というテーゼは、日本の浄土庭園とはまるで異なる発想に映る。2019/01/04
nightU。U*)。o○O
1
イギリス成立以前から18世紀までをわずかな分量で追うので、文化史とはいえかなり大まかで駆け足な印象。主に自然と人工の対比で話が進められるが、イギリスの内政とうまく絡めあって要点がつかみやすい。序論と終章でわずかに触れるだけの日本庭園との対比も、もっと緻密に書かれていたら面白かったが。どうでもいいけど誤植が多い。2016/09/30
caizim
1
屋敷から眺める景色のためだけに、地形を変え、時に村をまるごと排除するという風景式庭園の存在を知って、驚愕のあまり手に取った一冊。庭は文化であるという説明に納得。日本との対比でより興味深く読めました。日本の、遊具が設置されているだけで緑が少ない公園は醜いと私も思う。しかし同時に、毎年夏になると家の庭木に群れる何十万匹もの毛虫と戦い、敗れているので、管理の大変さも身にしみて分かってしまう。自然と付き合うのは得意なはずの日本、なんとか上手い落とし所を見つけられないのかなあ。2014/03/27