出版社内容情報
シリーズ解説:
「彼を知りえたことは私の生涯の中で最も刺激的な知的冒険の一つであった」という B・ラッセルの証言を引くまでもなく、ウィトゲンシュタインの哲学的思索の軌跡は、二十世紀の知的世界が遭遇した一つの事件であった。比類のない分析力のおもむくところは、論理的に完璧な言語の構想から、具体的な語の使われ方に文法を見出そうとするところにまで及び、考察の照準は、一貫して言語の批判に向けられていた。
内容説明:
本書の中心的な主題は、感覚、知覚、想像、思考といったいわゆる「心理現象」の意味を改めて問いなおすことである。言語の理解を各人の経験する内的体験に基づいて説明することに対する批判は、ウィトゲンシュタインの後期の著作に繰り返し現れる主題だが、ここでは内的体験をその本質とするかのように思われるさまざまな心理現象がさらに広い範囲にわたって吟味され、こうした現象に対する新たな見方の可能性が示唆される。新資料による2巻を新たに追補した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
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『探究』での規則に対する「アスペクト盲」の考察は、ここでは心に対する「意味盲」として検討される。「<あいつは馬鹿だ>と言ったとき私は・・・のことを意味していたのだ」(226)という時、「意味盲」は音の塊として聞く。著者は、意図の存在は意図の表現なしに理解できないという。感覚・知覚も含めた心理現象の説明が批判の対象だ。「意味盲」は体験の欠如であり、それゆえ誤解も評価もできない。「規則に従う」ことにも意味を見いだせない状態の想定つまり「アルペクト盲」と「意味盲」によって、「私的言語」はその存在自体が疑われる。2017/02/09