出版社内容情報
シリーズ解説:
「彼を知りえたことは私の生涯の中で最も刺激的な知的冒険の一つであった」という B・ラッセルの証言を引くまでもなく、ウィトゲンシュタインの哲学的思索の軌跡は、二十世紀の知的世界が遭遇した一つの事件であった。比類のない分析力のおもむくところは、論理的に完璧な言語の構想から、具体的な語の使われ方に文法を見出そうとするところにまで及び、考察の照準は、一貫して言語の批判に向けられていた。
内容説明:
具体的言語行為の考察
ウィトゲンシュタインは、後期思想がようやく明確な形をとりはじめたころ、『哲学的文法』と題する著作を準備したが、ついに刊行することはなかった。本書は、その手稿の第一部「文、文の意味」の全訳である。ある文を理解するとはどういうことか、何ものかが有意味な記号でありうる条件は何か。この主題を考察するにあたって彼のとった態度は、一貫して、生きた言語の使われ方、はたらき方そのもののなかに「文法」の基盤を見いだそうとすることだった。本書は、その困難な道を切り開いていった記録である。