眼の神殿―「美術」受容史ノート

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  • サイズ B6判/ページ数 393p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784434141706
  • NDC分類 702.16
  • Cコード C1070

内容説明

高橋由一の「螺旋展画閣」。その形象をなぞるようにして、「美術」概念の受容にまつわる思考が結晶化してゆく。制度‐施設史を主柱として、さまざまな次元にわたる明治期の史料がいっせいにざわめきたつライヴ感に充ちた歴史叙述。第12回サントリー学芸賞受賞作。

目次

序章 状況から明治へ
第1章 「螺旋展画閣」構想(洋画史の舞台―高橋由一の画業=事業;快楽の園の螺旋建築―「螺旋展画閣」構想;水と火の江戸―建設地について;武家の美術―江戸的なものと近代;螺旋建築の系譜―影響源(1)
未遂の博覧会計画―影響源(2)
時代の孕むちから―幕末明初の文化的混乱
二人のF―「螺旋展画閣」構想の背景(1)
明治一四年の意味―「螺旋展画閣」構想の背景(2)
反近代=反芸術―美術という制度)
第2章 「美術」の起源(文明開化の装置―博物館の起源;美術への胎動―博覧会の創始;「美術」の起源―翻訳語「美術」の誕生;「芸術」と「美術」―博物館の分類;眼のちから―内国勧業博覧会の創設;すべてであろうとする「美術」―「美術」概念の限定;美術の揺籃―内国勧業博覧会と「美術」)
第3章 「美術」の制度化(建築=制度への意志―明治一四年の由一(一)
天の絵画―明治一四年の由一(二)
“つくる”論理―『美術真説』のフェノロサ
統合と鈍化―「日本画」の創出と「絵画」の鈍化
美術という神殿―「美術」をめぐる諸制度と国家の機軸
パンドラの匣―空虚という名の希望)
終章 美術の終焉と再生―日本語「美術」の現実

著者等紹介

北澤憲昭[キタザワノリアキ]
1951年、東京生まれ。美術評論家、美術史家。女子美術大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kenitirokikuti

6
千葉県立西部図書館(松戸市)にて。美術史家の松下哲也氏のツイートで知ったもの。昭和最末期に刊行、日本美術史論では有名だそうな。幕末・維新ではなく、大日本帝国憲法あたりのネイション・ビルディングの再検討を行うもの(でいいかな)。とは別に、70年代のアバンギャルドが80年代のバブルに向け絵画の高額取り引きみたいなとこに向かう時期に書かれたものなので、そっちを思い出させられた。文学も美術も、西洋近代化の変容が大きく、起源の物語が作られる。そもそも実証的に起源を問い直すという姿勢が近代なのだけども。2020/10/26

mittsko

3
美術史・美術批評による美術概念の構築主義的批判の起点となった一冊と仄聞する(*'▽') 「眼の神殿」とは明14、高橋由一の「螺旋展画閣」構想のこと。本書はまずこの構想の紹介により、明治初頭、美術概念の受容期の思想的・制度的変動をスケッチする。そこから、「美術」という語の誕生の顛末、美術の制度化の史的過程がたどられる。この背景の中、前衛芸術を浮かび上がらせる。なお本書は、89年初版を10年に修正再刊した「定本」。末尾所収、足立元の堅実かつ鋭利な「解説」が、初版をはさむ美術研究史を見事にサーベイする2019/01/22

yururiruruy

2
『眼の神殿』定本。外来概念である「美術」が日本的な形で制度化する過程を追う。制度論は作品そのものを論じる美術史と比べると抽象的で慣れない感じもあったが、議論は入念な文字史料の探索に基づいており説得力があった。本書は20年以上前の著作を近年「定本」として再発行したものであり、巻末には他者による「解説」が付される。『眼の神殿』の美術史学史上の位置づけが示されており、本文の内容と併せて今後美術史を綴りたい人間としては求めていた道しるべのひとつである。「解説」は今後の読書の案内としても使わせてもらいたい内容。2011/08/08

tnk

1
制度−施設からみた近代日本美術史。「美術」概念が舶来品であることに注意しながら、美術史や国粋主義の歩みを明らかにする。 制度史の重視は非常に共感できるのだが、オーソドックスな史学からすれば空中戦にすぎるように感じる部分もある。(あとがきで、その意義は自ら説いているが。)2019/02/08

鵜殿篤

1
もはや必読古典になってますね。明治10年代と明治20年代のナショナリズムが異なっていることを丁寧に説明している人も、実はあまりいなかったりする。

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