出版社内容情報
第二次世界大戦前後から今日までのポーランド美術の特質「応用ファンタジー」を通して、欧米中心の美術に再考を促す。
日本では紹介される機会の少ない、第二次世界大戦前後から今日までのポーランドの美術を取り上げる。厳しい状況下の1950年代のポーランドで生まれた、生き延びるための技術とウィットに満ちた芸術様式「応用ファンタジー」は、冷戦期にとどまらず、ポーランド芸術全体に見られる特質である。「想像力の飛翔と狂気との狭間をゆれ動くあり方」は21世紀の芸術の行方を照らし、欧米中心の美術に再考を促すきっかけとなるだろう。
はじめに
第一章 戦後~60年代を中心に
戦前から戦後、ポーランド美術の果たした役割――全体主義と民主主義の狭間で
1 冷戦下でのポーランドの文化的アイデンティティの構築――ヴルブレフスキ、ヤレマ、カントル
2 戦前と戦後をつなぐモダニズムと前衛――スツシェミンスキとその後継者たち
3 国家の文化政策がもたらしたもの――「雪解け」以後
4 カトヴィツェの前衛
コラム1 ポーランドの至宝:レンブラントと珠玉の王室コレクション
第二章 1970~80年代を中心に
ポーランドのネオ前衛
1 冷戦期におけるポーランドのネオ前衛――ロバコフスキ、クフィエクリク、コズウォフスキ、鴨治、ベレシ、カントル、リベラ
2 ヴォディチコの初期の活動とその意義
コラム2 イェジ・リシャルト「ユリィ」ジェリンスキ〔一九四三~一九八〇年〕「ユリィの帰還」
第三章 1990年代
転換期の作法――中東欧の現代美術
1 展覧会成立の背景
2 出品作品
3 中東欧圏の戦後現代美術再検討の機運
コラム3 存在へのアプローチ 戦後ポーランド美術への誘い
第四章 1980年代後半~現代
21世紀における芸術の役割について――象徴と記憶:バウカ
1 戦後のポーランド情勢、東欧革命以後
2 映像作品を中心に
3 闇に触れる――バウカ「事の次第」
コラム4 美術の中の歴史 Historia w sztuce
第五章 2000年代~現代
現代美術におけるポーランド、応用ファンタジーとしてのポーランド美術
1 映像と時間――レイマン
2 日常からの「覆し」――アルトハメル、サスナル
3 社会応用芸術
3・11以後の芸術と批評の可能性――ジミェフスキ以後
おわりに
初出一覧
図版出典
口絵出典
参考文献
地図
年表
事項索引
人名索引
【著者紹介】
京都市立芸術大学美術学部准教授。1963年兵庫県生まれ。京都大学大学院哲学研究科博士後期課程美学美術史学専攻修了。ヤギェウォ大学哲学研究所美学研究室留学(クラクフ、ポーランド)。1991年から2008年まで国立国際美術館学芸課勤務。専門は近・現代美術、美学。主な展覧会企画は「芸術と環境」1998年、「いま、話そう」2002年、「転換期の作法」2005年、「液晶絵画」2008年、「龍野アートプロジェクト」2011-14年など。主な著書は『アヴァンギャルド宣言――中東欧のモダニズム』(三元社、2005年、共訳)、『ポーランド学を学ぶ人のために』(世界思想社、2007年、共著)、『中欧のモダンアート――ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリー』(彩流社、2013年、共著)、『珠玉のポーランド絵画』(創元社、2014年、共訳)など。
内容説明
第二次世界大戦後から今日までのポーランド美術を紹介。現代社会、現代美術にとっての意義を論じる。
目次
第1章 戦後~60年代を中心に 戦前から戦後、ポーランド美術の果たした役割―全体主義と民主主義の狭間で(冷戦下でのポーランドの文化的アイデンティティの構築―ヴルブレフスキ、ヤレマ、カントル;戦前と戦後をつなぐモダニズムと前衛―スツシェミンスキとその後継者たち ほか)
第2章 1970~80年代を中心に ポーランドのネオ前衛(冷戦期におけるポーランドのネオ前衛―ロバコフスキ、クフィエクリク、コズウォフスキ、鴨治、ベレシ、カントル、リベラ;ヴォディチコの初期の活動とその意義)
第3章 1990年代 転換期の作法―中東欧の現代美術(展覧会成立の背景;出品作品 ほか)
第4章 1980年代後半~現代 21世紀における芸術の役割について―象徴と記憶:バウカ(戦後のポーランド情勢、東欧革命以後;映像作品を中心に ほか)
第5章 2000年代~現代 現代美術におけるポーランド、応用ファンタジーとしてのポーランド美術(映像と時間―レイマン;日常からの「覆し」―アルトハメル、サスナル ほか)
著者等紹介
加須屋明子[カスヤアキコ]
京都市立芸術大学美術学部准教授。1963年兵庫県生まれ。京都大学大学院哲学研究科博士後期課程美学美術史学専攻修了。ヤギェウォ大学哲学研究所美学研究室留学(クラクフ、ポーランド)。1991年から2008年まで国立国際美術館学芸課勤務。専門は近・現代美術、美学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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