出版社内容情報
沖縄に生まれ育った著者が、「沖縄戦体験を語らう場」を創り、10年間、 837回、2924時間に及ぶ体験者の声を集めた記録。
内容説明
「私たちの言葉を、戦争を直接経験していないすべての世代の人たちへ」単なるインタビューではない。時を経て、場と仲間を得て、初めて言葉になった人びとの想いの記録。
目次
第1章 沖縄を知る
第2章 沖縄戦を伝える
第3章 「青春を奪われた」若者たちの物語―沖縄戦を生きた一〇代の本当の想い
第4章 「人を殺めたこと」を抱え生きた元兵士の物語―戦世を生きるということ
第5章 「戦争に奪われたもの」を取り戻していった女性の物語―六十余年心の奥に閉じ込めていた感懐
第6章 その生きざまを通して
終章 沖縄の想いを伝える
著者等紹介
吉川麻衣子[ヨシカワマイコ]
1975年11月13日、沖縄県那覇市に生まれる。琉球大学法文学部卒業、九州産業大学大学院国際文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)、臨床心理士。現在、沖縄大学人文学部准教授。専門は臨床心理学、人間性心理学。近年、多様性の理解・教育の分野に興味を持ち、実践・研究を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かいゆう
27
『「あの戦争はいったい何だったのか」…虚しさ、怒り、愚かさ、残忍さ……いかなる形容詞もしっくりこない複雑な想いでした』私も著者と同じ複雑な想いでいっぱい。沖縄戦は、この太平洋戦争の全てが凝縮されたような戦争だった。今までたくさんの体験談を読んできたけれど、“話せない”という方の気持ちを、抱えているものの重さを、自分は今まで考えた事があっただろうか。話を聞かせてくださる方の苦しみを、“話す”という決心の大きさを、しっかりと胸に刻んで覚えておこうと思った。 2017/09/05
かおりんご
22
ちょっと思っていたのとは違った。沖縄での戦争体験をまとめているといえばそうなのだけど、それよりもあの時あの場所で戦争を体験した人たちに、語りの場を設けて交流することがメインな感じ。心理療法の一種に思えた。ハルさんの人との距離の取り方には、グッとくるものがあった。でも、最期は人を信じられるようになってよかったなと思う。2020/08/11
ぐり
3
傷ついた人から話を聞くために、研究とはいえ、これほどの年月をかけて取り組まれたことに感服した。聞き取りの内容と同等かそれ以上に、話し手(おじいおばあ)が話すにいたるまでのやりとりに字数を使っていて、それも読み応えがある。 それから人の語りを一面的に報じることへのジレンマも共有できた。平和学習で沖縄を訪れる人はこのジレンマこそ持ち帰るべきだ。2017/10/14
井坂 茜
3
臨床心理士である筆者が、沖縄戦の体験を本当は話したい・聞いてもらいたいと思っている人たちに寄り添い、やっと口にすることが出来た体験談をまとめた本。自分だけ生き残ってしまった事、疎開して地上戦を体験しなかった事、スパイと疑われて拷問を受けた事、兵士として人を殺めた事。思い出したくない事や、自分が加害者だと思ってしまう事を60年以上経ってやっと話せた人たち。そしてやっと話せて安心したように、亡くなる方も多いということ。先日のチビチリガマの件を考えると、体験者が減っていく中で戦争の傷をどう伝えていくべきなのか。2017/09/17
しゅえ
3
「想いを言葉に」することは難しい。それが思い出したくもない記憶ならなおさらだ。しかし、想いを言葉にすることで昇華できる気持ちもある。戦争経験者同士で始めた「語り場」。回を重ねる中、60年以上閉じ込めた想いを初めて言葉にできたという人がいた。言葉にしたことで、少しだけ気持ちがすっきりした、と。軍人だった人、スパイ容疑をかけられた人、さらっと書かれているが、どの体験も壮絶だった。泣いた。各人物の言葉遣いを丁寧に表記しているので、読みながら目の前で話を聞いているような臨場感があった。良作。2017/08/10