出版社内容情報
【解説】
ナチスの台頭,ユダヤ人迫害の歴史,ゲットーでの生活と抵抗運動,強制収容所で行われた大量殺戮,収容所開放と収容者の社会復帰までの道のり……写真資料とともに伝える。
内容説明
本書は、ナチと第三帝国の体制に関与協力した人びとが、第二次世界大戦中、六百万人近いユダヤ人を組織的に殺害した「ホロコースト」について、その全体史を跡づけた著作である。本書では、何よりまず犠牲者の視点に立って、この途方もない歴史的ジェノサイドの過程が克明にたどられている。
目次
1 ナチの台頭と暴虐(ホロコーストの足音;ニュルンベルク法と人種差別政策;ユダヤ人難民の行方)
2 ホロコーストの展開(ヨーロッパ各地のゲットー;国家政策としての殺戮;絶滅収容所)
3 悲劇の終焉(抵抗と支援;ホロコーストの終焉;それぞれの出発)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
24
人間は他の人間を差別する。細かな差異を憎み、肌の色の違いを罵倒し、異なる信仰を嘲笑する。そんなことは誰しも(勿論僕も)心の中で毎日のように繰り広げているだろうけれど、人間は他の人間をその想いを募らせることで殺してしまう。想い続けることはその対象への愛を深めるだけではない。憎しみを増幅し相手の人間性を忘却してしまう第一歩にもなり得る。差別意識のギリギリのところ。許されない第一線を超えないように。誰もが加害者にも被害者にもならないように。相手が同じ人間だということだけは決して忘れないように。2017/06/05
またの名
12
生物とくに人間はたくましく生きる。人間社会のゴミであるとしてユダヤ民族を絶滅させる計画が高コストを要するようになると、殺処分した死体から髪を抜き取り靴下にリサイクルする知恵を思いついたナチス。大学院生が「死体の口から取った金の再利用について」の論文を書き、実用化される。以前から人種排斥を非難していた各国に対して第三帝国は「ドイツがなぜユダヤ人を国民として認めたくないか、諸外国は理解できないらしい。だが、我が国がユダヤ人をくれてやろうという時に諸外国が欲しがらないのは驚きだ」と皮肉る。連合国側も抱える暗部。2017/10/02
Arte
2
ホロコ―ストについて最初から最後まで分かりやすく説明してあり、写真も多く読みやすく、これ一冊で大体分かるのでお勧め。最初にコレを読みたかったわ。それにしても、チャウシェスクは自国のユダヤ人を身代金と引き換えにイスラエルに送っていたのか。2021/09/09
つちのこ
2
ホロコーストの全体像をつかむにはうってつけの本。ユダヤ人迫害の歴史から始まり、ニュルンベルク法と人種差別政策によるゲットーの建設、そしてナチスの国家犯罪としての絶滅収容所における大量虐殺に発展していく過程を分かりやすく解説している。写真も多く掲載されているのでホロコーストの入門書として利用価値が高い。(1996.10記)1996/10/25
札幌近現代史研究所(者。自称)
2
大著だが学術書のように膨大な注釈はなく、残虐だが史的事実を捉えた画像も豊富で読みやすい。文明社会に起こりうる、また起こり得た凄惨かつ信じがたい大量殺戮をヨーロッパの主要地域とナチの主要犯罪の手法を描き我々を慄然とさせる。警世の書でもあるが何より読者に自ら考え「傍観者になるな」という論調が一貫しておりそれが一定の効果を持っている。ホロコーストはヨーロッパで起こった出来事だが人類の普遍的負の側面を持つ。我が国を始め非ヨーロッパ世界でも歴史教育の筆頭に、必修科目にならねばならない事項だと改めて強く感じた一冊。2020/05/19