著者等紹介
シェルー,クレマン[シェルー,クレマン][Ch´eroux,Cl´ement]
ポンピドゥー・センター(パリ)の写真部門学芸員。写真史家、美術史博士。『第3の目、写真とオカルト』(2004年)など、展覧会のカタログも編纂している。雑誌「写真研究」の副編集長でもある
伊藤俊治[イトウトシハル]
1953年生まれ。東京大学文学部美術史科学科卒。東京芸術大学先端芸術表現科教授。美術史・写真史にとどまらず、その活動の場は視覚芸術全般から、テクノロジー論や身体論にまで及ぶ
遠藤ゆかり[エンドウユカリ]
1971年生まれ。上智大学文学部フランス文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
130
彼が晩年には絵も描いていたとは知らなかった。しかし、絵よりも写真がやはり好きだ。そして、景色よりも人の写真がいい。彼の写真は静かで動いていないようだか、実は息づいていて、生を感じる。この本の中で最も好きだったのは、収容所から出るところのようなロシアの少年。2017/02/25
buchipanda3
102
フランスの写真家の業績と彼の言葉・信条を追った本。彼の作品の原点には本来なら相反しそうな論理と感性の組み合わせがあった。幾何学に基づいた構図の概念と不服従で偶然性を楽しむシュルレアリスム、これらの奇妙な混合こそがあの独特で人を引き付ける写真を生み出していた。戦後はそこにジャーナリズムが加わる。インドの難民キャンプ、上海のインフレ騒動、ソ連の運動選手のパレードなどからはこれら三つの要素が感じられ印象的。爪を引っ込め、目は光らせる。彼は写真を射ると表現されるが、本書掲載の撮影姿にはしなやかな鋭さが感じられた。2023/05/21
nobi
56
熟慮された構図の幾何学的性質とある瞬間の生命の「同時連合」の魔術的魅力。その動きのある報道写真はインパクトあるけど静けさを感じる街角の風景により惹かれる。Thames & Hudsonの写真集では例えばNew York 1947。ビルの谷間の日陰の細い路地。男が膝を立てて腰を下ろし一匹の猫が微妙な距離を保って向き合っている。もう一点Aquila degli Abruzzi, Italy 1952。鋼製手摺のある屋外階段の上から坂になった石畳の通りを臨む。祝い事だろうか行き交う人々の配置と衣装と動きが絶妙。2017/04/23
harass
55
レビュで気になり図書館で見つけて読む。初めて芸術家の扱いを受けた写真家の代表作や生涯をまとめたもの。構図と対象物の美の秘密は、偶然にまかせる計算の産物であるそうで、へえと。マンディアルグが無名の時からの友人ででてくるので驚いた。おすすめの本。ただちょっともっと大判の本で読みたかった。ちょっと小さい気がする。2017/05/19
春ドーナツ
20
ある作家が書いた「七番目の男」という短篇小説のこんな一節を思い出した。「どうやったらそんなに生き生きとしたかたちや色彩を、真っ白な空白の上に一瞬のうちに生み出すこができるのだろう(略)それが純粋な才能というものだった(略)」***「Who are you?」状態で読み始めて、キャパとマグナムを設立した辺りから、「ん」となり、やがて決定的瞬間が訪れた。それはトルーマン・カポーティのポートレイトという形をしていた。イノセントワールド。村上春樹氏が翻訳した本の装丁に使われていたのだ。あなただったのですね。握手。2019/09/16