出版社内容情報
チベットやヒマラヤ地域には、1200年の間、弱者として生き抜いてきた「ボン教」という土着宗教が存在する。ボン教は、チベットにおける国教の地位を8世紀末に仏教に奪われた。以後、宗教マイノリティとして、弾圧や差別を受けながら現在まで生きながらえてきた。そうした困難な状況にありながら、ボン教徒たちは仏教徒たちに対して攻撃的な態度をとるのではなく、むしろ、仏教の長所を自らの宗教に取り込み、教義の発展、宗教的な成熟を図ってきた。ボン教が、困難な状況下で、平和的で融和的でありながら、強い独自性を維持する姿勢は、近年、多くの外国人を魅了しており、国際的な認知度も高まりつつある。
1980年代には、ダライラマ14世がボン教徒に対する差別を禁止し、ボン教の信仰の自由を強調した。現在に至るまでチベット亡命政府は、ゲルク派、サキャ派、カギュ派、ニンマ派の4大仏教宗派にボン教を加えた5つを、チベットの伝統的な宗教と認めている。無用な争いを避け、相手に学びつつも、独自性にこだわるという姿勢が、ボン教の哲学の発展と、宗教的権威の回復につながったのではないかと思われる。このボン教の育んできた「弱者として生きぬく術」は、過度の合理性や強者の論理が支配する社会に生きづらさを感じている人々に、自信と希望をもたらすものであり、現代日本人が学ぶべき点は少なくない。
ボン教は生き方を考える上で学ぶべき点が多いが、また、誰でも、いつでも、どこでも、どの宗教の人でも、手軽にできるすぐれた瞑想法を持っている。ボン教の瞑想法は、日々の生活のストレスを解消するだけでなく、人間関係、仕事、能力、宗教活動など、様々なことに対してプラスの効果を与える。「思考」にとらわれすぎないことで、冷静な判断ができ、内的なプレッシャーがなくなり、失敗しても恥ずかしく思わず、何事にも動じずに対処できるようになる。
内容説明
チベットで1200年間、弱者として生き抜いてきたボン教。困難な状況下でも無用な争いを避け、相手に学びつつ独自性にこだわる姿勢を貫いてきたボン教の初めての一般向け概説書。誰でもできる瞑想法も紹介。
目次
序章 ボン教とは
第1章 ボン教の歴史
第2章 ボン教の文化―ボン教僧院と地域社会
第3章 ボン教の儀礼
第4章 ボン教の思想
第5章 ボン教教義における密教の位置づけ
第6章 はじめてのゾクチェン瞑想―あなたの人生を支える大楽の瞑想
第7章 ボン教の呼吸法―ボン教のヨガが人体に及ぼす影響
第8章 ボン教のドリームヨガ
終章 弱者を生き抜くチベットの知恵―ボン教に学ぶフレキシビリティとレジリエンス
著者等紹介
熊谷誠慈[クマガイセイジ]
1980年、広島県生まれ。京都大学こころの未来研究センター准教授(上廣倫理財団寄付研究部門長)。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は仏教学・チベット学・ブータン学・ボン教研究
三宅伸一郎[ミヤケシンイチロウ]
1967年、岡山県生まれ。大谷大学教員。大谷大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門はチベット学、特にボン教史
小西賢吾[コニシケンゴ]
1980年、兵庫県生まれ。金沢星稜大学人文学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。専門は文化人類学
ニマ・オーセル,チューコルツァン[ニマオーセル,チューコルツァン] [Nima Hojer,Choekhortshang]
1976年、ネパールのドルポ生まれ。2008年、ボン教博士(ゲシェー)学位を取得。2017年、プラハ・カレル大学博士課程修了
箱寺孝彦[ハコデラタカヒコ]
1969年、神奈川県生まれ。箱寺先生のちいさな瞑想教室主宰。中央大学文学部卒業。ボン教のゾクチェン瞑想の伝授と、経典や関連文献の翻訳を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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