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出版社内容情報
本書はPTSDに対する対人関係療法の本邦初の本格的な臨床マニュアルである。
対人関係療法とは、患者が抱える対人関係上の問題への取り組みを通して、情緒面の回復および社会的スキルの構築を図る精神療法のことで、20世紀にアメリカで開発されて以降、うつ病や摂食障害などを対象に研究が重ねられてきた。それをPTSD治療へ適用しようと試みたのが本書の著者らであり、本書はPTSD治療に新たな選択肢を示すものだ。
というのも、従来のPTSD治療においては、病気の原因となった過去のトラウマに患者が向き合うことでその克服を試みる認知行動療法が主流とされている。それは有効な治療法ではあるものの、患者の心をさらに傷つけ容態を悪化させる危険性も孕んでいるため、治療自体を敬遠する患者がいるのもまた事実だ。しかし本書で取り上げる対人関係療法は、あくまでも「現在」の人間関係に焦点を当てた治療法であり、過去のトラウマへの言及は最小限に留める。また、治療コースが短期間(10数週間程度)に設定されていることからも、患者に与える負担が比較的少ない治療法だと言える。これは重篤なトラウマを抱える患者にとっても、従来の治療法に限界を感じていた治療者にとっても、画期的なアプローチとなるだろう。
本書では、膨大なデータと厳選されたケーススタディを用いながら、PTSDに対する対人関係療法の概要や意義、実際の診療の流れを丁寧に解説していく。非常に実践的なマニュアルとしての役割を果たすと同時に、対人関係療法の入門書として読むこともでき、一般の医療関係者から専門家まで、幅広い層に開かれた内容となっている。
特に第7章以降に登場する複数の症例では、治療者と患者の会話が克明に記録されており、実際の診療の流れを追体験することができる。それは診療場面のシミュレーション素材として機能するだけではなく、対人関係療法の特徴とその有効性への具体的な理解を手助けしてくれることだろう。
PTSD治療や精神療法に関心のあるすべての読者に手に取ってもらいたい一冊だ。
内容説明
「過去」のトラウマから、「現在」の対人関係へ―従来の治療法とは異なるIPTの画期的なアプローチを、膨大なデータと厳選されたケーススタディを用いながら丁寧に解説。PTSD治療に新たな選択肢を示す、本邦初の臨床マニュアル。
目次
エビデンスに関するまとめ
対象となる診断―PTSDとは何か?
IPT入門
PTSDに対するIPTの適用
PTSDのためのIPT―初期
PTSDのためのIPT―中期
PTSDのためのIPT―役割の変化
PTSDのためのIPT―悲哀
PTSDのためのIPT―役割をめぐる不和
PTSDのためのIPT―終結期と維持
困難な状況と特別な環境
実践上の諸問題
PTSDのためのIPTのトレーニング
おわりに―私たちはここからどこに向かうのか?
著者等紹介
マーコウィッツ,ジョン・C.[マーコウィッツ,ジョンC.] [Markowitz,John C.]
医学博士。コロンビア大学医学部精神科臨床教授であり、ニューヨーク州立精神医学研究所の研究精神科医。マーコウィッツ博士は国際的に認知された精神療法研究専門家であり、NIMHおよび財団の支援による対人関係療法(IPT)、認知行動療法、薬物療法の諸研究を実施、気分障害・不安障害・パーソナリティ障害の治療を研究してきた。300あまりのピア・レビュー(査読)を受けた研究論文、書籍の章、レビュー論文(メタ解析など)を発表
水島広子[ミズシマヒロコ]
慶応義塾大学医学部卒業・同大学院修了(医学博士)。現在、対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)
中森拓也[ナカモリタクヤ]
東京外国語大学卒業。翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。