出版社内容情報
内田樹氏の講演「心の古層と能」の全記録。また、ソヌ・シャムダサーニ氏の講演「ユングの『赤の書』の背景と可能性」も収録。
内田樹氏が「能」を軸に日本人の身体運用と無意識との関係性を語り尽くした講演・討議の全記録を掲載。『赤の書』編者のソヌ・シャムダサーニ氏がユングの魂の遍歴をたどりつつ同書の成立過程を明らかにした貴重な講演も収録している。また、ユング心理学に関する国内外の文献を紹介するセクションを新設。研究論文はいずれも若い女性の事例で、とくに身体をめぐる強烈なイメージの展開が現代という時代を考察する上で示唆に富む。
目 次
はじめに
シンポジウム
●基調講演「心の古層と能」 内田 樹
日本人の身体観
型が要求する身体運用/能の何が面白いのか/不快に耐えて歩く/
パッシブな身体
人間の条件を規定する身体運用
ベトナム人の歩き方/村上春樹のエピソード/オイディプス神話/
人間が直立歩行することの意味/歩き方が表すコスモロジー
中世人から見た世界
憑依する土蜘蛛/エンドレスの鎮魂の儀礼/意識は関与しない/
何が起きてもやめてはいけない/変容する空間/祝福を与える/
能楽の起源/自分のイデオロギー性に気づく
●討論――基調講演を受けて 指定討論者 鎌田東二・川戸 圓
主体を超えた次元への回路
ケージ・海童道・世阿弥/旋律的世界の対極にあるもの/
非対称性を重んじる/能管の源流としての石笛/
日常とは別の世界を現出させる/能の面はなぜ小さいのか
無意識の臨床
心の古層に鬼がいる/統合失調症者のいる空間/
臨床家のアクティビティ/心理臨床と能
無意識を来臨させる装置
能のさまざまな仕掛け/登場・退場の仕方の不思議/内田流学生相談/
枠を維持することの重要性
心と身体をめぐって
妄想の奔放さと体の硬さ/触覚と聴覚から体をほぐす/
心のワザを仕掛ける/俯瞰する知覚/巨大な身体、幻想的な身体/
密教の原理/なぜ山を登り、バク転をするのか/おわりに
講演録
●ユングの『赤の書』の背景と可能性 ソヌ・シャムダサーニ
論 文
研究論文
●解離にみるリアリティとの邂逅――20代女性との面接過程 長野真奈
●夢と描画表現にみる「母性」の傷つきと癒し 井上靖子
●女子大学生の夢に見られたdismembered body image について 斎藤清二
印象記
●日本人の自我のありようと主体性――日本人の「私」からの発信 山 愛美
●4th International Academic Conference of Analytical Psychology & Jungian Studies大会印象記 小木曽由佳
●The International Society for Psychology as the Discipline of Interiority大会印象記 畑中千紘
文献案内
●言語連想法について 川戸 圓
●海外文献 岸本寛史
『ユング心理学研究』投稿規定(2012年9月改定)