出版社内容情報
【内容紹介】
時代の変遷の中で、日本人の母性イメージは種々に混乱し、女性のアイデンティティもさまざまな形で拡散を見せている。本書は、セラピストとして、そうした現代的諸問題を抱えるクライエントと40年以上も会い続けてきたベテラン臨床家が、「母性とは何か」について叡智に満ちた臨床心理学的視座を示す。ことに第2部では七つの事例を取りあげて、現代的問題の孕む葛藤とその解決の道筋を、個性化の観点から鮮やかに示している。
【詳細目次】
第1部 母性とは何か
1 序
2 臨床心理学における母性に対する基本的考え方
3 二種類の母性
3-1本能的母性
3-2学習的母性
4 母性の二重性
4-1母性的行動における心の一致と乖離
4-2母親の子ども虐待の心理――鬼子母と鬼子母神
4-3「育てる」と「飲み込む」
5 子どもと環境
5-1子どもをめぐる諸関係
5-2子どもにとって両親のおとこ性とおんな性
5-3わが国における母性軸・女性性軸の変化とこどもへの影響
5-4日本文化に横たわる母性のあり方
第2部 現代日本女性の葛藤と個性化――事例研究を中心にして
1 母性イメージの歴史的展望と現代的諸問題
1-1 歴史的観点から見た母性
1-2 現代的諸問題
1-3 女性のライフサイクルと母性の発達
1-4 母娘関係の特質
2 事例研究――現代日本女性の葛藤と個性化
事例1 家庭内暴力の娘との一体化と愛の交流体験が、母親自身の思春期課題の克服と母性の開発、個としての成熟をもたらした事例
事例2 思春期の息子の反抗によって気づかされた母性過剰と思秋期の事例――子どもとの間に境界を作れない母性
事例3 田舎文化と都会文化のはざまで揺らぐ母性の再生による家族の再生
事例4 「イエ」文化の変化についていけなかった母性の喪失と再生の事例
2-5 事例5 知的障害と強い自己愛的娘を持ったために母性を喪失した母親の母性の再生
2-6 事例6 女性性を優先させたキャリアウーマンの母親と対人関係障害の娘の事例
2-7 事例7 地域性とイエと旧主的夫に縛られたため母性を発揮できずに、ふたりの子どもに先立たれた母親の事例――誰が犠牲になるか
文献
【著者略歴】
1972年 京都大学大学院教育学研究科博士課程修了
現在 佛教大学教授
著書 『臨床教育心理学』(共著,創元社)『カウンセリングと教育』『人間関係論』(以上共訳,岩崎学術出版社)『心理学』(共著,学術図書出版)『現代青年心理学』(共編著,培風館)『学校カウンセリング』(共編著,ミネルヴァ書房)『母をなくした日本人』(共著,春秋社)等。
目次
第1部 母性とは何か(臨床心理学における母性に対する基本的考え方;二種類の母性;母性の二重性;子どもと環境)
第2部 現代日本女性の葛藤と個性化―事例研究を中心にして(母性イメージの歴史的展望と現代的諸問題;事例研究―現代日本女性の葛藤と個性化)
著者等紹介
東山弘子[ヒガシヤマヒロコ]
1967年京都大学教育学部卒業。1972年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。現在、佛教大学教授、京都大学博士(教育学)、臨床心理士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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