出版社内容情報
トラウマ治療で重要な、患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹する、という治療者の姿勢に焦点を当てて解説する。
トラウマ治療や技法について知っていることと、実際にトラウマの治療ができることは違う。トラウマ体験者は深い傷つきによって、対人関係における「信頼」に問題を抱えていることが多い。したがって、トラウマ治療において最も重要なことは、個別の治療戦略や技法よりも、治療者の姿勢であるとも言える。患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹するなど、本書はトラウマに向き合う治療者の姿勢について、誰もが納得できる豊かな提言に満ちている。
はじめに
第一章 「不信」という現実に向き合う│治療の土台づくり
「トラウマ患者との出会い」からトラウマの認識まで
トラウマ患者に信頼されるということ
ジャッジメントという暴力
トラウマ治療において特にジャッジメントに注意しなければならない理由
トラウマ体験者はすでに傷ついている
トラウマ体験者はジャッジメントされやすい
ジャッジメントを手放さないと治療者が燃え尽きる
アセスメントとジャッジメント
治療によるトラウマ
治療によるトラウマに向き合う基本姿勢
第二章 「コントロール感覚の喪失」という現実に向き合う│治療のメインテーマ
トラウマ体験=コントロール感覚の喪失
「役割の変化」
慣れ親しんだソーシャルサポートと愛着の喪失
怒りや怖れなど、役割の変化に伴う感情のコントロール
新たなソーシャルスキルの必要性
自尊心の低下
「役割の変化」の治療
コントロール感覚の回復につながる態度
第三章 「病気」という現実に向き合う│治療の位置づけ
「病気扱い」が嫌われる理由
PTSDは「怪我」か「病気」か
「医学モデル」が持つ意味
対人関係上の役割期待のずれを埋める
役割期待のずれとジャッジメント
回復のプロセスと病気
「患者に変化を起こすこと」と「患者を変えること」の違い
「治療法の選択」のためのアセスメント
第四章 「文脈」という現実に向き合う│トラウマの位置づけ
「明確化」か「解釈」か
本人の文脈を理解するということ
指標としての違和感
境界性パーソナリティ障害と複雑性PTSD
「ボーダー」という偏見
治療という文脈におけるトラウマ
第五章 「身近な人たち」の現実に向き合う│トラウマと対人関係
トラウマ症状は身近な人間関係に影響を与える
症状と認識されないことによるずれ
夫婦のトラウマ
親のトラウマ
患者の不和の相手がトラウマ体験者である場合が多い
トラウマ体験者同士が親しくなるということ
相手のトラウマにどう関わるか
別れというプロセス
「緊急処置」の位置づけ
患者にトラウマ体験を与えた相手が身近な生活圏にいることがある
第六章 「ジャッジメント」の現実に向き合う│燃え尽きを防ぐ
治療者・支援者にとってのジャッジメント
「トラウマ体験者の支援」という「役割の変化」
「境界設定」の意味
「境界設定」という「役割期待の調整」
「かわいそう」というジャッジメント
ジャッジメントを手放すということ
相手の現在に集中するということ
トラウマ体験者は「かわいそう」なのか
トラウマ体験者の味方でいるということ
第七章 治療者自身の現実に向き合う│自らの価値観やトラウマ
治療者自身のトラウマ
自らのトラウマに向き合う
治療者の価値観の位置づけ
「形」へのとらわれを手放す
トラウマと社会正義
第八章 「トラウマ体験」という現実に向き合う│ゆるすということ
トラウマと「ゆるし」
対象喪失としてのトラウマ体験
「ゆるし」という究極の選択
自分自身を「ゆるす」ということ
文献
あとがき
【著者紹介】
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』(岩崎学術出版社)を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)。主な著書に『自分でできる対人関係療法』(創元社)、『「怒り」がスーッと消える本』『身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本』『自己肯定感、持っていますか?』(いずれも大和出版)、『怖れを手放す――アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ』(星和書店)、『10 代の子をもつ親が知っておきたいこと』(紀伊國屋書店)、『怒らない子育て』(青春出版社)、『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)などがある。ホームページ http://www.hirokom.org/
内容説明
治療者が「病気」ではなく「人間」としての患者に評価を下してしまうと、新たなトラウマを生じさせかねない。傷つきやすく、すでに対人不信に陥っている人をさらなる不信に追いやることなく、また、治療者自身にも苛立ちや燃え尽きが生じることがないようにするには、どうすればよいのか?本書では、トラウマに向き合う治療姿勢について深く掘り下げながら、患者・治療者双方にとって最も望ましい関係の持ち方を模索する。
目次
第1章 「不信」という現実に向き合う―治療の土台づくり
第2章 「コントロール感覚の喪失」という現実に向き合う―治療のメインテーマ
第3章 「病気」という現実に向き合う―治療の位置づけ
第4章 「文脈」という現実に向き合う―トラウマの位置づけ
第5章 「身近な人たち」の現実に向き合う―トラウマと対人関係
第6章 「ジャッジメント」の現実に向き合う―燃え尽きを防ぐ
第7章 治療者自身の現実に向き合う―自らの価値観やトラウマ
第8章 「トラウマ体験」という現実に向き合う―ゆるすということ
著者等紹介
水島広子[ミズシマヒロコ]
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』(岩崎学術出版社)を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。国際対人関係療法学会(ISIPT)理事。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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