出版社内容情報
ナチズムのあらゆるジャンルの表現文化を掘り下げ、その虚構と現実を捉える。
内容説明
文学・映画・舞台・日記・ラジオ・パンフレットなど、国民社会主義のあらゆるジャンルの表現文化を克明に掘り下げ、虚構と現実の現場に踏み込みながら、ファシズム・ナチズムに対抗する全体としての思想を追求した著者畢生の書き下ろし。
目次
ナチズムの現在
第1部 ドイツの受難と英霊神話の創生(虚無に向かってさすらうものたち―レオ・シュラーゲターとメラー‐ヴァン‐デン‐ブルック;最初のナチ詩人がのこした遺産―ディートリヒ・エッカルトとアルフレート・ローゼンベルク ほか)
第2部 文化政策の夢と悪夢(ヨーゼフ・ゲッベルスの想像力―小説『ミヒャエル』を読む;国民社会主義文化の創出に向けて―文化官僚たちの「第三帝国」)
第3部 主体の表現、参加の文化(二つの大戦の英雄として―ハンス・ツェーバーラインの体験と文学;日常茶飯事の政治性―ナチズム文化の「新しさ」とは何か? ほか)
著者等紹介
池田浩士[イケダヒロシ]
1940年6月大津市生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程修了。1968年4月から2004年3月まで京都大学勤務。2004年4月から京都精華大学勤務
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感想・レビュー
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代理
3
頭よりも心に訴えたナチズム。虚構を現実にしようとしたナチズム。そうやって自らが焚きつけた革命への情熱を、自らで葬り去ったナチズム。虚構でしかない”敵”を倒して得たナチズムの勝利もまた『虚構』でしかなかった。しかしこの虚構は現実よりも強かった。面白かったけども、飛躍しすぎな気もした。2009/03/12
ポルポ・ウィズ・バナナ
1
今の日本とシンクロしてるなあ。あとは生贄やな。 ハンス・ツェーバーラインの戦争体験小説「ドイツへの信念」は戦争の残虐さと虚しさを描きつつも愛国的な作品。2013/08/23
kei
1
ヒトラー(ナチス・ドイツ)支配下の第三帝国にて、人々の満足感は後世の我々より高かった...という話から始まって、それらが実際にどうだったのか、詳しく書かれている。第三帝国前後のことについて全く予備知識無しで読み始めてしまったのでなかなか辛かったが、最近京大でやってた池田浩士講演会の講演録( http://www.kyoto-up.org/archives/1708 )と合わせて読むと味わい深い。2013/01/10
Meroe
1
「虚構」という面から、ナチズムと文化の関係をさまざまに追っていく。そこでは「新しい文化の創出」が目指されていた。私たちはそれを、どのように批判することができるのか。才能や意欲に溢れながら正当でない社会・環境のために死に、しかし「私たち」とともに歩んでいる死者・英雄というイメージの創出。前衛芸術=「頽廃芸術」とナチズムの文化の切れない関係。2011/07/25