内容説明
几帳面、仕事熱心、堅実、清潔、律儀、権威と秩序の尊重など、われわれ日本人一般に共通する性格特徴は何に起因するのだろうか。日本人の「金」に対する特異な態度を、西洋の人々との比較も合わせ主に貨幣論的観点から考察し、われわれの対人行動を根底から規定する原理を臨床実例をあげて具体的に指摘する。従来の病理学説に果敢に挑戦する現象学的人間学のユニークな成果。
目次
はじめに
第1章 メランコリー親和型と日本人
第2章 日本人と金
第3章 鬱病と非鬱病の症例
第4章 鬱病と借金
第5章 躁鬱病と境界例
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bocboc
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金性、商品性、モノ性という軸から対人関係や仕事、自殺、罪と罰など鬱病を取り巻く様々な事項が説明されており、すっきりと理解できた。具体的な症例も随所に交えられ、卑近な事象と推し比べながら読むことができた。本論に関係のない部分で一般論に立ち返って注釈を加える筆の進め方も個人的に好きだった。そして何より、人間学的に精神疾患を捉え説明しようという筆者の熱意がひしひしと伝わってきた。素人ながらそうした方法論に再び光が当てられることを期待したい。2015/12/04
びーちゃん
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評価32010/09/15
石橋
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贈与論についての興味からこちらも再読。日本人の贈与には強い「金性」がある…つまり交換でしか移動せず、移動すると直ちに元の状態に戻ろうとする。「恩は負債であって、返済しなければならないもの」であるから、ありがたいと思いつつ負債をおわされたというアンビバレントな感情を持つというところにすごく納得。 補足として日本人の贈答とポトラッチとの比較に言及。その両価性が大きな違いではという論。2022/01/09