内容説明
紡ぎ、染め、織り…探しもとめていたほんとうの色、日本の色その長い歳月で繙いたかずかずの書物、とりわけドストイエフスキイの人物たちの苦悩と哀しみいま暮れ泥む夜の涯で祈る気持ちでいとおしく、愛すべきものたちに想いを寄せる書き下ろしエッセイ。
目次
繭文(ものごころ;随縁;自由な魂 ほか)
白夜に紡ぐ―ドストイエフスキイ・ノート(サンクト・ペテルスブルグの街角で;虫喰いの頁;虐げられし人々 ほか)
折々の記(松園と母;お茶はふしぎな木;赤の秘密 ほか)
著者等紹介
志村ふくみ[シムラフクミ]
1924年滋賀県生まれ。1955年滋賀県近江八幡に住み、染織の研究をはじめる。1964年京都嵯峨に移り住む。1990年重要無形文化財保持者に認定。1993年文化功労者に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
42
素晴らしい本で、一気に読んでしまった。一昨日、読んでいる最中だったが、以下のように書いた: 同氏がドストエフスキーにこれほど傾倒されていたとは、驚きだ。機(はた)織の専門家だし、吾輩のまるで知らない詩人や研究者との交流があるのはともかく、本書で大きな割合を占めるドストエフスキー関連のエッセイはなかなかの読み物だった。2019/11/01
そり
19
絵を上手に描ける人はものの見え方が違うのだろうな、と思ったことを思い出した。著者もそういう人らしい。植物から色をとり、糸を染め、紡ぎだす芸術に生きる人。▼色の根源は光であると教えられた。光は色の母胎。私達が日々目にしている色は三つの領域にある。海の藍、炎の赤、手にとっては無色透明な自然現象にあらわれる色。植物の緑、土、宝石、物に結びついている色。そして、人が生み出した化学染料の色。なにかを観察しようとする時、目に入るのは色だ。これらを自覚して時間をかければ、もっと細やかに世界を目に映せないだろうか。2017/12/01
りー
11
瑞々しい文章。心ひかれたのは色彩についての考察。特に緑色について。「緑したたる植物の葉から緑は染まらない」そしてゲーテの「闇に最も近い青と、光に最も近い黄色が混合した時、緑という第三の色が生まれる」いう言葉の引用。闇と光が合わさってはじめて生命の緑が生まれるということ。常に新しい目で世界を見ようとする志村さんの若々しさよ。今の自分を越える糸口を求め続けるエネルギーに圧倒されました。中盤に大きく頁を割かれているドフトエフスキーへの迸る思いは、私にはうまく受け取れませんでしたが、チャンスがあれば、と思います。2019/01/10
双海(ふたみ)
9
紡ぎ、染め、織り…探しもとめていたほんとうの色、日本の色その長い歳月で繙いたかずかずの書物、とりわけドストイエフスキイの人物たちの苦悩と哀しみいま暮れ泥む夜の涯で祈る気持ちでいとおしく、愛すべきものたちに想いを寄せる。本書のような味わい深い随筆がこれからも心ある人々に読まれ続けることを切に願う。2023/11/08
星の街のらいおん
3
万葉の人たちの色に込める思いを取り上げた章が心に残りました。ドストエフスキーを読み続ける毎日は過酷ですね。そのような読書に立ち向かう勇気がなかなかもてませんが、「虐げられし人々」は読んでみようかなと思いました。2014/12/31