感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
關 貞浩
9
思想の基本にあるのはキリスト教神学・形而上学に根差した存在論・認識論だが、意識の発達の過程で生じた内奥性との不連続を説明し、理性を総動員して理性の向こう側を描こうとする挑戦的かつ壮大な試みに、神秘思想・密教的な要素も感じる。『全て動物は世界の内に、ちょうど水の中に水があるように存在している』(P.21)というこの世界観を的確に表現した一文のおかげで、我々は本来、客体化された事物としてではなく、存在性との連続面にあるのだという悟りにも似た啓示、これまで見えていた世界の景色が一変する感覚を味わうことができる。2019/12/24
quolc
4
〈世界の内に水の中に水があるように存在している〉動物性=連続性=内奥性が、俗なる世界=主客分離の徹底とともにいかに疎外されていくか。連続性回復の場面たる祝祭や不吉さを孕んだ聖なるもののイメージが、二元論とモラルの成立とともにいかにして理性=持続性の守護者たる白い精霊へと転換されていくか。帝国、生産、そして科学的世界の成就と感覚的世界の排除。まだ書かれていることの表面をなぞることしか出来ていないが、この明晰な思考に触れるのは何より楽しい。2017/01/14
hechima1106
0
NC