内容説明
目を覆うばかりの窮乏、人間性を奪う都市環境、悲惨な過度労働と女性労働、児童虐待、乱れた性関係、健康破壊…。資本主義の母国での戦慄の生活・労働実態と、自らの解放へむけて闘い成長する労働者階級の姿を、克明な現地調査に膨大な事実資料をくわえ、青年エンゲルスが息詰まる迫力で描く。いまなお読む者を引きこむ名著の最新訳。
目次
序説
工業プロレタリアート
大都市
競争
アイルランド人の移住
諸結果
個々の労働部門―狭義の工場労働者
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
9
全集版で読みました。名著です。むき出しの資本は、儲けをあげるためならどこまでも賃労働者を搾取することがリアルにわかります。それは、命をも削るものであり、女性や子どもも例外ではありません。同時に資本を規制する各種の労働法制の重要性もわかります。規制緩和が声高に言われている日本ですが、求められているのは労働者保護法制なのです。また、労働運動の重要性と必然性が読み取れます。権利獲得は労働者階級自らの運動が重要なのだと思いました。社会福祉の古典としてはとても重要な書だと思います。2014/03/28
富士さん
3
再読。多少イデオロギッシュですが、それ以上に著者の丁寧な取材と素朴な正義感がみなぎっていて教条臭さを打ち払っています。本書で重要なのは、著者の信念がとても保守的であるという事です。人として最低限の良心に訴えかけ、古くからの人が従ってきた常識を守ろう、というのが主張の根本にあるのだと思いました。あるべき生活を、家族を、生命を守れという本書の主張に比べると、すべてを根底から覆して金に還元する資本主義、自由主義が如何にラディカルな革命な事か。社会主義が受け入れられた背景には、この保守性があるのだと思います。2020/06/18