内容説明
発病後、母親とイエナで暮らしていたころのこととして、こんな話が伝えられている。母親が知人の家を訪ねようとすると、まるで子どものようにニーチェが後を追ってくるので、彼女は彼をその家のピアノの前に座らせ、いくつかの和音を弾いて聴かせる。すると彼は、何時間でもそれを即興で変奏しつづける…この話を読むたびに私は、いつも胸のつまる思いがする―傘寿を過ぎた哲学者・木田元が自在に綴った日々の思索には、生き抜くためのヒントが満ちています。
目次
第1章 読書余滴(大量生産の秘密;近松門左衛門の謎;和算小説の面白さ ほか)
第2章 あすへの話題(星屑のステージ;巴里祭;風太郎さんの明治小説 ほか)
第3章 読書雑記(川上弘美『センセイの鞄』解説;北森鴻『孔雀狂想曲』解説;本当になにもかもを小林秀雄に教わった―小林秀雄『モオツァルト』 ほか)
著者等紹介
木田元[キダゲン]
1928年山形県出身。海軍兵学校、山形県立農林専門学校を経て東北大学文学部哲学科に進学。同大学大学院特別研究生、同大学文学部助手を経て、中央大学文学部専任講師・助教授、1972年より同教授。1999年に定年退職後、同大学名誉教授。ハイデガー『シェリング講義』をはじめ、メルロ=ポンティ、カッシーラー、フッサール、アドルノなど翻訳の仕事も数多く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tom
16
大昔に著者の翻訳書を何冊か読んだのだけど、内容はさっぱり理解できなかった。恰好を付けていただけの恥ずかしい記憶。この本は、お仕事に疲れたときに読んでいた本についてのコメントが中心。題名は、精神的におかしくなり、幼児返りしたニーチェのエピソードによるもの。ニーチェは、年老いた母の世話を受けていたのだけど、お客が来ても、母にまとわりつく。そんなとき、母は、ピアノの和音を幾つか弾いてやる。そうすると、ニーチェは何時間も和音で遊び続けていたというもの。フムフム、和音で遊ぶのかと記憶に残りそうなエピソード。2016/08/25
メルセ・ひすい
2
12-25.27. 哲学書 洋・邦の紹介 「哲学の醍醐味が味わえる20冊」 ①饗宴・プラトン 訳久保勉 岩波文庫 ②告白(上.下) 聖アウグスティヌス 訳服部英次郎 岩波文庫 ③方法序説 デカルト 訳谷川多佳子 岩波・・・・・・20まで・オヨミ! 傘寿を過ぎた哲学者・木田元が日々の思索を自在に綴った、生き抜くためのヒントに満ちたエッセイ集。古典から現代文学までの読書雑記も収録する。『大航海』『日本経済新聞』等に掲載した文章を単行本化。2009/11/08
林克也
0
この本を読んで、木田さんが雑読で、でもものすごい量の読書家だということを知り、哲学者木田元の深さの一端を知ることができた。 ニーチェの、本人はどう感じていたかは別として、哀しい晩年に胸が詰まる。 2014/09/26
ニールキャサディ
0
木田元先生のエッセイ集。今回は、ハイデガーから少し離れて、書評が中心。芭蕉、山田風太郎、川上弘美、北森鴻など、木田先生が長年愛読されてきた、作家への暖かい印象評が多い。木田先生から、北森鴻や逢坂剛を教わり、ほぼ全作を読む程好きになったが、再読した今回も、改めて山田風太郎の作品群を読みたくなった。2012/03/16
koji
0
木田先生のエッセイは、鋭い視点と温かい言葉遣いで絶品です。特に、表題作のエッセイが心を打ちました。2010/01/23