内容説明
本書の第1部では、20世紀序盤の社会的転回について考察している。第2部の諸論文は、日本の戦後という空間の中での丸山真男の知的営みに着眼し、その明晰さが取り残してしまう盲点がいかなる構造的必然性に規定されているのかを考えることを媒介して、探究を進めた。第3部では、現在のポピュラーカルチャーの中に現れている現象を、直接の説明の対象とし、第4部では、眼を未来に向け、われわれの希望である来るべき「自由な社会」の諸条件を整える上で、われわれの“現在”は、克服すべきどのような困難を孕んでいるのかを問いかけた。
目次
“不気味なもの”の政治学―ファシズムをめぐって
超克の転回―アジアはなぜ要請されたか
超人にして幼子―終点=始点としてのニーチェにおける
丸山真男ファシズム論のネガ
トカトントンをふりはらう―丸山真男と太宰治
加速資本主義論―象はジェットコースターになる
エルヴィスが母にロックを捧げた意味
“自由な社会”のために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
論文集で、真ん中にある2編だけが別の文庫に収録されている。つまり本書はあまり出来な良くないと判断されたようだ。前半がハイデガーとニーチェで硬めの、後半が文化論で入り易い論考になっている。こういう場合、後者の方が優れていることが多い。『エルヴィスが母にロックを捧げた意味』ロックミュージックは単なる音楽ジャンルではなく、しばしば外部的な共同体の欲望を代表しているという認知を通じて、自らの存在根拠を政治運動の形式をとって存在してきたという。それが行き詰った時、資本主義的な側面が現れる思想的な背景を考察している。2023/03/23
manmachine
1
大澤の本を読んでいつも思うのは、論理をアクロバティックさせているようでいて(少なくともその構えをとっているようでいて)、どうにもしきれていないという点である。2009/11/22
hsm
0
表題論文のみ読了。2009/10/07
MADAKI
0
印象に残ったのは以下の2点。 1.ファシズムの特徴:①ナショナリズムの先鋭化された形態 ②極端な指導者崇拝 ③指導者原理が国家全体を包摂する支配体制になる ④制服を着た暴力装置 ⑤共産主義と資本主義の両方に対して反対の姿勢を取る 2. ハイデッガーはナチズムと親和:事物の事実存在(○○がある)は、いかなる本質存在(○○である)にも還元不可能。行き場を失った他者が現前し、内面に対しても不安を覚えざるを得ないため、テロが日常化する。