内容説明
昭和史に刻まれる諜報事件、驚愕の真相。ゾルゲを嵌めたのはあの男だった?!元外務省国際情報局長が、これまでの「ゾルゲ事件」の定説を覆し、もうひとつの「日米開戦の正体」を説き明かす。
目次
序章 仏アバス通信社支局長のゾルゲ回顧
第1章 近衛内閣瓦解とゾルゲ事件
第2章 冷戦とゾルゲ事件
第3章 つながる糸―一九四一年十月十五日の動き、近衛内閣の崩壊、尾崎秀実の逮捕、ニューマンの離日、ウォルシュ司教の離日
第4章 ゾルゲ報告とソ連極東軍の西への移動
第5章 米国を参戦に向かわせるため動く英国安全保障調整局
第6章 ゾルゲ事件の評価
著者等紹介
孫崎享[マゴサキウケル]
1943年生まれ。1966年、東京大学法学部を中退し、外務省に入省。英国、ソ連、米国、イラク、カナダ駐在を経て、情報調査局分析課長、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。2002年から2009年まで防衛大学校教授。『日米外交―現場からの証言』(中公新書)で山本七平賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
42
暗号名ラムゼイ ゾルゲがスパイだったのは事実だけれど、極刑に当たるようなことをしたとは思えない。 近衛内閣打倒のために仕組まれた、という説を展開 印象的な眉毛だ2020/11/07
Porco
21
ゾルゲというのは、実際は大したことのないスパイだったのに、近衛首相の追い落としのために利用され、冷戦にも利用されたために、大事件として扱われているという話。そうだったのかもしれん。2018/02/10
makio37
7
所々に冗長さを感じる部分はあった。しかし、いまいち要領を得なかったゾルゲ事件について詳しく知ることが出来、読後の今は満足している。ゾルゲという「絶望的なまでに平和を愛する一人の人間」と、諜報網と呼ぶにはあまりにまとまりのないそのグループがなした仕事は、死刑に値するほどのものではなかった―近衛内閣瓦解と共産主義排除の為に「政治的に」利用された事件だった、という主張。私の中ではすでに本書の内容がゾルゲ事件の定説だ。この事件の中核の検事2名が戦後にあの砂川裁判を担当したという事実にも驚いた。2017/08/06
シノウ
6
稀代のスパイとして描かれることが多い、ゾルゲについて豊富な参考資料をもとに真実を究めようとする本書。 ゾルゲの諜報力は、新聞記者や外交官程度もしくはそれ以下であり雇い主のソ連からは見向きもされていなかったこと。ゾルゲのとった行動は、彼が受けた罰に比べて遥かに軽かった。 事件を大きくしたのは、思想検事になっていた当時の検察と、近衛内閣に近かった尾崎が、関与していたことによるスキャンダル化をめぐる反応。 戦後には冷戦期のプロパガンダとして功績が粉飾されたこと。 読み応えがあったし、視点が開けた。2020/02/05
Hiroki Nishizumi
5
ゾルゲ評価への新視点。凡人が政治的理由で高く持ち上げられているとのこと。はっきりとしたエビデンスを取得したとは言い難いが、興味深い指摘だ。そして真のキーマンであるチャーチルへの言及が少ないので、別途取りまとめる予定であるのだろうかと疑問に感じた。2020/09/07