内容説明
「市兵衛さんにしか頼めねえんだ」夏の日、渡り用人・唐木市兵衛の許を、請け人宿の主・矢藤太が訪れた。依頼は攫われた元京都町奉行・垣谷貢の幼い倅の奪還。拒む市兵衛に矢藤太は、倅の母親はお吹だと告げる。お吹こそ、青春の日、京で仕えた公家の娘で初恋の相手だった。奪還を誓う市兵衛。だが、賊との激闘の中、市兵衛は垣谷家の大罪と衝撃の事実を知ることに…。
著者等紹介
辻堂魁[ツジドウカイ]
1948年、高知県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、出版社勤務を経て執筆業に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とし
80
風の市兵衛「遠雷」13巻。上方での事はあまり物語の中では触れられて無かったように思うが、今回は市兵衛さんの京都での6年間が語られた10数年後江戸での事件に繋がり、いつものメンバーの絡みは少なかったが読み応えはあり。2014/08/15
めぐ
68
シリーズ11作品目(13巻目)前作の読了は9ヶ月も前。するすると読めるのが快感だ。相変わらず市兵衛さんは清々しく話すことにも動きにも無駄が無い。自分を多く語らない代わりに相手への余計な詮索も無く、自分の仕事と信じる方向だけを見ている。賃金は度外視で守るべき大切なものは必ず守る。そこが気持ちが良い。幼いのに泣かない誘拐された勝之助やその身を案じる姉の節子の気丈夫さ。耐える母、お吹。一方、垣谷家の男達のなんとずるいことか。京からの腐れ縁の矢藤太は、(私が想像していた以上に)市兵衛のことをわかっているようだ。2021/01/28
はにこ
37
矢藤太に頼まれて旗本の息子の誘拐事件の交渉人になった市兵衛さん。旗本はやってきたことの後ろ黒いことがあるため、こっそり解決しようとしたが失敗。結局再び市兵衛が介入するはめに。大人がやってきた悪事の尻拭いをする、娘節子が健気で可愛らしかった。市兵衛の過去も明らかに。なかなか女に興味を示さない市兵衛もこんな若気のいたりがあったのね。2020/11/12
のびすけ
30
今回の市兵衛の仕事は、拐われた垣谷家の幼い倅・勝之助を救うこと。勝之助の母は、市兵衛がかつて京都で仕えた九条家の娘・お吹だった。市兵衛が九条家で仕えた6年が明かされる。矢藤太との出会い、若かりし市兵衛とお吹との儚い恋、そして二人の別れ‥。物語のラストで矢藤太の口から語られる言葉に驚愕!果たしてそれは本当なのか!?ところで、拐われた勝之助の救助では、勝之助の姉・節子の勇気が胸を打つ。それに比べて垣谷家の男どもの体たらくたるや。読み終えた後に見る表紙イラスト、馬上の市兵衛と節子の姿がなんとも感慨深い。2021/08/15
ひさか
25
2014年7月祥伝社文庫刊。書下ろし。シリーズ13作目。誘拐された男児を取戻す市兵衛の活躍が凄い。初恋の人が登場して、市兵衛の過去が明らかになるところも興味深かった。市兵衛ってあっさりしたところあるよねぇ、風たるゆえんですね。2018/06/28