出版社内容情報
ゆるカワ日本美術史
矢島 新[ヤジマ アラタ]
著・文・その他
内容説明
本書は、土偶・埴輪から各時代の仏像、中世の絵巻、近世・近代絵画まで、ゆるカワな名品ばかりを集め、通史とした初の試みである。もうひとつの日本美術史の豊かさに驚かされるにちがいない。
目次
序章 日本美術のオリジナリティ
1章 ゆるカワのはじまり
2章 庶民が育てたゆるカワ 室町時代~桃山時代
3章 庶民が育てたゆるカワ 江戸時代
4章 素朴な工芸、かわいい工芸
5章 江戸のかわいい動物たち
6章 知識人のゆるカワ
7章 近代のゆるカワ
終章 グローバルの波を超えて
著者等紹介
矢島新[ヤジマアラタ]
1960年、長野県生まれ。跡見学園女子大学教授。東京大学大学院博士課程中途退学。渋谷区立松涛美術館学芸員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ままこ
75
思わずクスッと笑ってしまう絵や工芸品などが丁寧に詳しく解説してある。にっこり兵士の埴輪。医学書に描かれている奇天烈な虫も笑える。地獄絵図なのに脱力系。目が点の耳鳥斎の絵は笑笑。やっぱり鳥獣戯画と歌川国芳は良いな。ヴィジュアル版だけど画像が少なかったので今度は画像多めの図鑑を見てみたい。2019/06/25
bura
68
かわいいという美意識の分析から始まる。その反対語は綺麗であり美しいとするならば、かわいいは「親しみやすさ」が不可欠だ。そんな視点をテーマにした本書は日本美術史の「ゆるカワ」作品についての考察である。オバさん体型の遮光器土偶、笑う埴輪、代表格の鳥獣戯画。桃山時代の「かるかや」「築島」はその稚拙さが愛おしい。「御伽草子」や「大津絵」も素敵だ。尾形光琳の「竹虎」はイラストの様。更に江戸時代の仙厓義梵「布袋」と「犬」は現在のマンガキャラと言っても良い面白さだ!どんな時代でも人々はほっとする世界に心を許すんだなぁ。2022/12/04
六点
12
土偶に始まり、参詣曼荼羅、鳥獣戯画、湛慶作の子犬、若冲、白隠、果ては夢二や大観に至るまでの日本美術史を「ゆるくてかわいい」と言う側面から追った本である。菅江真澄のスケッチや参詣曼荼羅など「本人は超真剣だけど、結果的にゆるい絵になってしまった」ものもあるが、近世に入り、享受層が庶民にも広がり、ゆるカワは市民権を得た。ぬこ田は耳鳥斎の絵が好きである。漫画が「画力の時代」になってしまっても、その作者達は耳鳥斎ぽい省略画を描いているのだ。著者はグローバル化の時代でゆるカワの未来を危惧しているが、ぬこ田は楽観してる2021/04/29
tsubomi
8
2020.03.25-04.30:縄文時代から現代までの日本の美術史に登場するカワイイものや素朴で愛らしいものを紹介。土偶、埴輪、寺社の縁起絵巻、民間仏、大津絵、地獄絵、民芸などなど。ファインアートのリアリズムと反対に、洗練されていない、わざと手作業の跡を残したり描きこまないで終えたり、デッサンよりも自分の表現したい点を強調することを優先させて、自然にあるいは狙ってゆるカワになった作品の数々。琳派、若冲、応挙、国芳といった画家たちの他に白隠、仙厓、大雅、蕪村、さらに菅江真澄や横山大観も登場するのが新鮮。2020/04/30
クサバナリスト
6
ファインアートにとらわれない違った切り口の美術史書。 「絵」の解説そのものより、漢字の「絵」の「エ」という読みは、実は「音読み」だということに一番驚いた。2019/03/23