内容説明
志賀直哉は「小説の神様」と云われ、その文章は紙面から活字が立ち上がってくると云う。ところが直哉の文章の一体どこが名文なのか、直かにあたってみると、一見すらすらと読めてしまうだけに、かえって分析するのが難しい。三〇年間、志賀直哉、森鴎外、井伏鱒二などの全集を読破して「名文」を採集しつづけ、『日本語大シソーラス』を編纂した著者が、独自の視点から直哉の名文を分類、分析した画期的な書。英語では決して表現できないすっきりとした美しさ、翻訳不可能と云われる融通無碍な接続の技法、句読点の打ち方ひとつにまで施された並々ならぬ推敲…。直哉の名文を通して、日本語独自の自由、美しさを明らかにする。
目次
序章 本書『志賀直哉はなぜ名文か』が出来上がるまで
1章 「心の動き」を生き生きと表現する直哉の技法―「空間の動き」に擬えることで生まれる躍如とした描写
2章 畳み込む・畳込―複雑な文章をすらすらと違和感なく読ませる
3章 志賀直哉の推敲・省略法―一字一点を忽にしない直哉の筆致
4章 日本語の融通無碍な「接続」―英語でいう「関係代名詞」がなくても、文章は正確につながる
5章 リズミカルな文章―リズムが弱いものは、本当のものでない
6章 「白い花咲く」と「白く花咲く」―形容詞の連体形と連用形を意識して使い分ける
7章 字眼―一字の巧拙がその文章の死活をきめる
8章 ディテールは作品のお臍―美辞麗句を百万遍くりかえすより効果がある
終章 私の志賀直哉
著者等紹介
山口翼[ヤマグチタスク]
1943年、千葉県生まれ。スタンフォード大学、慶應義塾大学卒業。大学では統計・計量経済を学ぶが、小説家を志し大学院を中退、1970年、渡仏する。まずは語彙を増やそうと自分用の「類語辞典」の編纂を思い立ち、広辞苑などの辞書から言葉を収集、志賀直哉、森鴎外などの全集を読破して名文を採集する。1991年帰国(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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