内容説明
国際都市・上海租界で繰り広げられた西洋人音楽家たちのドラマ。音楽を愛する市民が100年かけて守り育てたものは…“極東一”と称えられた上海工部局交響楽団の歴史が今、初めて明らかに。
目次
第1章 上海に生まれた「西洋」(1845~)
第2章 パブリックバンドの誕生(1879~)
第3章 ドイツ人音楽家の運命(1906~)
第4章 名指揮者の登場(1919~)
第5章 多国籍都市のシンフォニー(1929~)
エピローグ 日本人と「上海交響楽団」(1942~1945)
著者等紹介
榎本泰子[エノモトヤスコ]
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学術博士。同志社大学言語文化教育研究センター助教授を経て、中央大学文学部助教授。著書『楽人の都・上海―近代中国における西洋音楽の受容』(研文出版、1998年)でサントリー学芸賞、日本比較文学会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハチアカデミー
11
いかにして上海は音楽の都となったのか、その歴史を、当事者による一次資料から描き出す良書。西洋人の生活する上海の租界には、西洋の娯楽施設が本場さながらに建設され、人々は享楽を得ていた。しかし、複雑に絡み合う大国の利権と人の移動のなかで、その文化は混合されていく。イタリア人、ロシア人、ユダヤ人、フィリピン人に中国人、国家間ではいびつな争いをしつつも、芸術を思う気持ちによって、オーケストラが編成されていく。オプティミスティックと言えないこともないが、本書はそれがよい。これもまた、文化からみる一つの歴史である。2013/06/25