内容説明
ブッシュ・ドクトリンやネオコンの論理、リメイクされた松本清張原作のドラマ『砂の器』の詳細な解析を通じて炙りだされる国際社会と戦後日本の隠されたメカニズム。平和憲法の現代性、あっと驚く北朝鮮問題の処方箋、「おたく」の定義、「他者」と「未来」の共通性、偽記憶を生みだす心の仕組みなど、手品のようにくりだされる意表を突く分析と提言の彼方に、現在の大沢社会学の到達点が啓示される。
目次
第1章 平和憲法の倫理(問題状況;憲法と安全保障;二つの提案;民主主義以上の民主主義)
第2章 ポスト虚構の時代(理想の時代と虚構の時代;現実への逃避;死者の回帰;もうひとつの『砂の器』;もうひとつの時代へ)
第3章 ユダとしてのオウム(問題の極限・解決の前衛;四つの提案)
著者等紹介
大沢真幸[オオサワマサチ]
1958年、長野県松本市に生まれる。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。千葉大学助教授などを経て、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授(比較社会学・社会システム論)。社会学博士
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感想・レビュー
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ことぶき あきら
2
「現実からの逃避」ではなく「現実への逃避」。逃げ込む現実は、暴力的であって、しかし実際は虚構以上の虚構である。これは政治において、政府与党が我々に提示している現状認識についても同様のものがあると言えるのでは。2015/09/21
KA
1
積読解消で読んだ。特定の文化表象や事例をもって時代と国を(精神)分析するという、まぁよくある論法だが、加藤典洋アンサーよろしくの改憲議論と『砂の器』読解は見事だった。ただ、オウム分析は完全に冗長で蛇足。これもまた、2004年という執筆時の限界か。しかし『人間の証明』は必読だな、これは2020/04/12
いくすけ
1
人が逃げ込む「現実」こそがもっとも虚構めいたものである、という内容が印象的だった。「リア充」がどことなくうそくさいのはこのせいかもしれないと思った。非リア充とされる者たちはユダ的な役割を担っているのではないか。誰に褒められも評価もされないが、汚い部分≒「真の現実」を寡黙に生きている人たちなのではないか。彼らを笑い貶める権利は誰にもない。2009/06/29
eleking
1
なかなか興味深いっす。2008/06/16
hiratax
0
(2005)内容は思い出せない。この頃の大澤真幸の文章で覚えているのは乱射事件の犯人が書き記した「コロンバインハイスクールダイアリー」の解説で、現実からの逃避が90年代的感性の乱射事件だとしたら、今は「現実への逃避」へ移っている。その顕著な例がリストカットだとかそんな内容。2005/03/14