内容説明
ロシア帝国とソヴィエト連邦のユダヤ人はなぜ、アメリカに逃れ、世界最大のユダヤ人社会を作ったか。なぜイスラエルを建国し、その最大集団となったのか。そして、旧ソ連に残ったユダヤ人の運命とは。本書は、20世紀の激動―ツァーリズムの専制、ロシア革命と社会主義の実験、ナチの侵攻とホロコースト、シオニズムとイスラエル建国、そしてソ連崩壊―を生きぬいたロシア・ユダヤ人の、栄光と苦難に満ちた民族の精神史を活写する。
目次
1 弾圧下の創造―帝政ロシア時代(一八八一~一九一七年)
2 あいまいな民族解放―ロシア革命前後(一九一七~二二年)
3 ユートピアを求めて―社会主義建設の時代(一九二二~三九年)
4 ホロコースト―ドイツ占領の時代(一九三九~四五年)
5 暗黒時代と灰色時代―解放と復興(一九四五~六七年)
6 改革か、適応か、去るか―ペレストロイカへの道(一九六七~八七年)
7 ロシア周辺部のユダヤ人―非アシュケナジ
8 葛藤の一世紀―ロシア・ユダヤ人の運命
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
4
18世紀のポーランド併合でいきなり百万人単位のユダヤ人を国内に抱え込んで以来、ロシア社会には反ユダヤ主義が常に渦巻いていた。帝政後期の19世紀後半の皇帝暗殺に「ユダヤ人が関与していた」という風聞によって全土でポグロム(ユダヤ人襲撃)が始まり、多数が西欧やアメリカに移民として逃れた。この反ユダヤ感情はロシア革命まで続き、それを何とか打開しようとするユダヤ側の動きの一つが、トロツキー等のボルシェヴィキに加わったユダヤ人達だった。革命は出自によらない平等な国民を生み出すはずだったが、スターリンの登場で潰える。2022/10/29
岸野令子
2
ロシアに住むユダヤ人は革命で社会主義の理想である《どの民族であるとかではなくソヴィエト市民》になれると思ってソ連で頑張った人たちも多かったけど、やはり差別や粛正の犠牲も出て、他の国に行き、またイスラエル建国以降はイスラエルに移住した。その時々に希望を見いだしたり失望させられたり政治に翻弄される。近年のイスラエル映画にはロシア移民を描いたものがあるので参考になる本。また旧ソ連の共和国にいるユダヤ人のことも詳しい。 2012/02/19